投稿日 : 2021.12.29

村井康司(音楽評論家)が選ぶ「2021年のベスト」3作品

村井康司

村井康司
音楽評論家。鎌倉FM「世界はジャズを求めてる」(木曜20時〜21時)の第一週進行役を担当しています。こちらから聞けますのでぜひ!
https://www.jcbasimul.com/radio/768/

ジャズの新作もいいアルバムが多かった2021年だが、発掘盤の充実ぶりも凄かった。ここに挙げた3タイトル以外にも、チャーリー・パーカー『バード・イン・LA』、チャールズ・ミンガス『アット・カーネギー・ホール完全盤』、リー・モーガン『コンプリート・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』、ビル・エヴァンス『オン・ア・フライデイ・イヴニング』など、のけぞるような貴重な発掘盤が目白押し。2022年は何が出てくるのか?

─2021年のジャズ発掘盤ベスト3─

ジョン・コルトレーン
『至上の愛〜ライヴ・イン・シアトル』

組曲「至上の愛」のライヴ・ヴァージョンはフランスでの演奏が発売されていたが、1965年10月にシアトルのジャズクラブで録音されていたこれは、ファラオ・サンダース(ts)、カルロス・ワード(as)、ドナルド・ギャレット(b)が加わった拡大版。サンダースとワードが激烈なソロをぶちかまし、ギャレットがギャリソンに絡み、パーカッションも鮮明に聞こえて、「アセンション版・至上の愛」みたいな壮絶さだ。


アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
『ファースト・フライト・トゥ・トーキョー』

1961年1月のジャズ・メッセンジャーズ初来日時、日比谷公会堂での1月14日の演奏をコンプリートに収録したCDだ。権利関係で公開すぐに上映中止となった記録映画『黒いさくれつ』のために録音されたテープが、奇跡的に発見されてリリースの運びとなった。モノラルの素晴らしい音で収録された演奏で、なにより驚いたのはウェイン・ショーターのアグレッシヴなプレイだ。モーダルなラインが随所に出てきて、日本のミュージシャンたちが困惑したのも無理はない。


ロイ・ハーグローヴ&マルグリュー・ミラー
『イン・ハーモニー』

早逝した現代ジャズのマスター二人が、2006、2007年に行ったデュオ演奏が2枚のCDに収録されている。曲のほとんどがスタンダードとジャズメン・オリジナルで、ロイの歌心溢れるトランペットと、それを優しく支えつつ見事な技術でソロを取るマルグリューのピアノが、鮮明な録音できっちりと捉えられている。二人が演奏する「アイ・リメンバー・クリフォード」には思わず落涙。ジャズを志す若者たちよ、まずこれを聴いてくれ!