投稿日 : 2023.12.30

【2023年ベスト】ジャズ アルバム BEST 50


James Brandon Lewis/Eye Of I

若くして現代音楽や民族音楽を学び、唯一無二のサウンドを追求するサックス奏者のアルバム。トム・ウェイツやメイヴィス・ステイプルズなどのアイテムも抱える先進的レーベル、アンタイからリリースされたのも納得だ。本作は電子チェロとドラムとのトリオ編成で、スピリチュアル・ジャズの最良のエッセンスをまる呑みしたような苛烈なサウンドが充満。ざらついた音像も魅力のひとつだろう。個人的には今最も気になるテナー奏者である。


Jason Moran/From the Dancehall to the Battlefield

ひたすら我が道を突き進むピアニスト、ジェイソン・モランのアルバム。本作は20世紀初頭に活躍したジェイムズ・リース・ヨーロップとランディ・ウェストンというミュージシャンに捧げられた作品。アルバート・アイラーの「Ghost」も取り挙げられている。型破りで独創的なモランのピアノも相変わらず素晴らしいが、テラス・マーティン(b)とナシート・ウェイツ(ds)という強力なリズム隊がアンサンブルを牽引している。


Joel Goodman/An Exquisite Moment

過去30年に150作を超える映画やTVの音楽を手がけ、エミー賞も受賞した作曲家ジョエル・グッドマン(key)のリーダー作。ダニー・マッキャスリン(sax)、エリック・ハーランド(ds) を全曲に招き、ランディ・ブレッカー、ジョン・パティトゥッチも参加。ジャズファンならずとも、この面子だけで腹がいっぱいになる。グッドマンは各人のソロが映えるように全体の統制を取っている。本人名義でのリリースは初だが、途轍もない才能である。


John Raymond/Shadowlands

トランペット奏者ジョン・レイモンドと、ボン・イヴェールの多楽器奏者ショーン・キャリーの共演作。レイモンドはカート・ローゼンウィンケルやギラッド・ヘクセルマンとも共演歴があり、ジャズの語法に基づくフレーズを奏でる。一方、キャリーの儚げなウィスパー・ヴォイスが茫洋な空気をつくりだし、うたものとしての完成度を高めている。アーロン・パークス(p)も参加。ボン・イヴェールのファンでなくとも一聴の価値ありだ。


John Scofield/Uncle John’s Band

全編ソロ・ギターだった前作から一転、ビル・スチュワート(b)、ヴィセンテ・アーチャー(ds)とのトリオで挑んだ作品は、2枚組で全14曲を収録。ジョンスコが盤石なリズム隊と組むことで、ギターを弾くことの快楽を再び取り戻したようなアルバムだ。特にロバート・グラスパーや山中千尋との共演歴もあるヴィセンテの活躍ぶりが目覚ましい。ボブ・ディランやグレイトフル・デッドのカヴァーもあるが、ジョンスコ節は不変だ。


John Zorn/Nothing Is As Real As Nothing

ECMに続き、ジョン・ゾーン率いるレーベル、ツァディックもサブスクが解禁となった。本作はそのゾーンと、ジュリアン・ラージ、ビル・フリゼール、テリー・ライリーの息子であるギアン・ライリーが協働したアルバム。アコースティック・ギターのみが使われており、まずはその響きの美しさと眩しさに陶酔させられる。滑らかで淀みないアルペジオから、縦横無尽なソロまで、アコギのみでこれだけ芳醇なサウンドが創られたことに驚く。


Johnathan Blake/Passage

現代ジャズを代表するドラマーのひとりがジョナサン・ブレイク。ブルーノートからの本作は、イマニュエル・ウィルキンス(as)、ジョエル・ロス(vib)、ダヴィ・ビレージェス(p)、デズロン・ダグラス(b)という布陣から成り、音楽的な引き出しの多さと懐の深さを実感させる一枚。ジョナサンが絶妙なタイミングで叩くシンバルがアクセントとなっている。21年に逝去したジョナサンのドラムの師匠=ラルフ・ピーターソンの作品も演奏。


Josh Johnson/Freedom Exercise

ジョシュ・ジョンソンは、ジェフ・パーカーやマカヤ・マクレイヴンとの共演歴もあるサックス/鍵盤奏者、シカゴ出身でLAに居を構える彼は、今様ジャズのキーパーソンである。本作は、絶賛を浴びたデビュー・アルバム『Freedom Exercise』にボーナストラックを加え、CD化されたもの。オーセンティックなジャズの語法を踏まえながらも、良い意味で雑味たっぷりのサウンドを聴かせる。ジョシュがハービー・ハンコックらに師事したのも納得。


Joshua Redman/Where Are We

サックス奏者のジョシュア・レッドマンによるブルーノート第一弾。特筆すべきは、13曲中9曲でヴォーカルを取るガブリエル・カヴァッサだ。ビリー・ホリデイやエイミー・ワインハウスからの影響も滲む彼女の存在抜きに、本作は成り立たなかっただろう。参加メンバーは、ブライアン・ブレイド(ds)、ジョエル・ロス(vib)、ニコラス・ペイトン(tp)、カート・ローゼンウィンケル(g)など、名手が揃った。滋味に富む一枚である。


Kassa Overall/Animals

例えば昨今のジェフ・パーカーのソロ作がそうであるように、ジャズとヒップホップを架橋してみせたのがこのアルバムだ。ドラマーとしてアート・リンゼイやマリーザ・モンチなどと共演してきたカッサ・オーバーオールは、プレイヤーとしても秀でた存在。それでいて、本作にはビート・ミュージック的な要素も持ち込まれている。シオ・クローカー、ヴィジェイ・アイヤー、アンソニー・ウェアらをフィーチャーした配役の妙にも唸る。

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