【review】 “ジミヘン+ジャコパス+アニマル” なジャズトリオのパラダイス感

2019.03.27

タイトル
Something About Rainbows
アーティスト
Preston Glasgow Lowe/プレストン・グラスゴウ・ロウ
レーベル
Whirlwind Recordings

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このバンド「プレストン・グラスゴウ・ロウ」が結成されたのは2012年。当時、ロンドンの夕刊紙『イブニング・スタンダード』は、彼らのことをこう書いた。

「メタリカ・ミーツ・ミンガス」

さらに同紙は、このトリオ(ギター/ベース/ドラム)のヤバさ加減を、こうも形容している。

「ジミヘンジャコパスアニマルデート」

ジミ・ヘンドリクス/ジャコ・パストリアス/アニマル

アニマルとは、米コメディ番組「マペット・ショー」に登場する、超ワイルドなドラマー設定のキャラだ。まあ何にせよ、この3者がじゃれ合ってる様子を想像するに素晴らしい地獄絵図。だが、実際の彼らの演奏を見ると、意外にも理知的な雰囲気だ。

このミュージックビデオは、昨年末に発表された最新アルバム『Something About Rainbows』の表題曲。すこぶるドープ&イル&メタリックな暗黒フュージョンだが、彼らにとって2作目となる本アルバムには、暖色系の穏やかな演奏も多数。たとえばこんな。

とはいえ、収録曲すべてに共通するのは、アバンギャルドで退廃的な空気。このアルバムで彼らが描きたかった世界も、まさに“そんな風景”なのだと思う。ただし、彼らの優れた画力は、写実的な風景画でなく前衛的な抽象画に向いた。そんな感じの音世界。

この音楽が、どこのジャンルに類別されるのかは知らないが「トリップ感あふれる幾何学ジャズ」あるいは「亜空間なムード音楽」として非常に味わい深いものがある。事実、本作を聴いた筆者の知人はこう言った。

ディストピアファミレスで流れてるラウンジ・ミュージック

なるほど。さすがは、ケニー・Gを聴いて「クリスチャン・ラッセンの絵を鑑賞するときの音楽」と看破した慧眼。彼の言う「ディストピアのラウンジ・ミュージック」とは、いわば “魔界のマーティン・デニー” とか “ゾンビのポール・モーリア” みたいなイメージだろうか。たしかに “退廃”と奇妙に親和するパラダイス感も、本作の不思議な魅力である。これは、角度こそ違え、前出『イブニング・スタンダード』紙の記者が見た世界とも、わりと近い気がする。

ちなみに、このアルバムのリリース元はアメリカのワールウィンド・レコーディングス(優良作品多数!)だが、彼らPGL(プレストン・グラスゴウ・ロウ)はイギリス出身。メンバーは、デヴィッド・プレストン(ギター)、ケヴィン・グラスゴウ(ベース)、ローリー・ロウ(ドラム)。見てのとおり、3人の名前を並べただけのバンド名である。この素っ気なさもいい。地元の先輩バンド、ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)みたいで。

Preston Glasgow Lowe
http://www.prestonglasgowlowe.com/