【review】“ただのファンクなフュージョン”にならない C.ポッターのビート探求作

2019.02.27

タイトル
Circuits
アーティスト
クリス・ポッター/Chris Potter
レーベル
Edition Records
発売日
2019.02.22

iTunesAmazon

マルチ奏者として知られるクリス・ポッターの最新作。本作でも彼はテナー、ソプラノサックス、クラリネット、フルートを吹き倒し、ギター、キーボード、パーカッション、サンプラーまで駆使。

前作(ECMから発表)は、アコースティックで静謐な雰囲気だったが、本作はエレクトリックでアクティブだ。その意図は、アルバムのオフィシャル・ビデオでも語られている。

雑な言い方をすると、本作はファンクなフュージョンだ。ただし、ダサくならない“フュージョンのやり方”が巧いなぁ…と感心しきり。そこは、メンバーのジェイムス・フランシーズ(p)、エリック・ハーランド(ds)、リンレイ・マルト(b)のセンスと手腕によるところも大きいのだと思う。

ちなみにアルバム名になった「サーキット」はこんな曲。

この語句「Circuits(=回路)」は、そのままジャケットのアートワークにも反映され、その図案は、本アルバムの“サウンド的な特徴”とも合致している。

ただし、これを「サイバーで無機質もの」と捉えるのは短絡的かもしれない。各曲をよく観察すると、この「回路」は、人間の神経や循環器であり、また、都市や交通といった人々の営みでもあり、ひいては、彼が奏でる“空気を送り込む楽器”の比喩であるかのよう。

だから、こんなオーガニックな質感の曲も、不思議と全体になじむのだ。

っていうか、この曲名「Koutome(コウトメ)」って何? まるで日本のお囃子や童謡のような旋律だけど…元ネタはこれ。

こうしたアフリカ由来のポリリズムとファンク成分も、アルバム全体に浸透している。対極にあるはずの電気信号(パルス)感や、集積回路さながらの多重録音とのマッチングもおもしろい。

その調和を象徴する場所が、アルバムの中間地点。件の「Koutome」と次曲「Circuits」(タイトル曲)の連結部分である。この2曲のクロスフェードが超かっこいい。 まるで「人間的な器官」が「機械的な回路」にトランスする様子を見せているようで、このアルバムの“最もエキサイティングな瞬間”だと思う。

そして、明滅信号のようなフレーズを矢継ぎ早に繰り出す、彼のプレイを聴きながら思う。これも、優れた脳回路の賜物だなぁ、と。