投稿日 : 2024.02.23

【東京・渋谷/東京Gorilla03】クラブ関係者御用達 スナック風情のヒップホップバー

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

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いつか常連になりたいお店 #79

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は道玄坂(東京都渋谷区)にあるミュージックバー『東京Gorilla03(トーキョー ゴリラ 03)』を訪問。90’sヒップホップを中心としたサウンドに心躍らせながら、楽しく飲めるお店でした。

最近まで紹介制だった 知る人ぞ知る人気の隠れ家

京王井の頭線の渋谷駅 アベニュー口から徒歩約3分、JR山手線ほか渋谷駅ハチ公口・南口から徒歩約6~7分、渋谷マークシティの裏手の雑居ビル3Fにある『東京ゴリラ03』。老舗のレコードバー『JBS』があるビルと言えばわかる人も多いはず。

狭い階段を上り、扉を開けば5席のカウンター、その奥に6〜8名ほど座れるソファ席がある。スナックの居抜き物件だったというだけあり、雰囲気はまさにそれであり初めて行くのは少し緊張するかもしれない。

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「昔からつるんでいて同じクルーだったラッパーのIQと、音楽ではない何か違うことを始めようと話したのがきっかけです。これまでLIVEでラップすること、つまり人前で喋ることをずっとやってきたから対面式の飲食店がいいのでは? って。最初は軽い感じでしたね」。そう語るのは、店主でありラッパーでもあるRICEさん。

自分たちの遊び慣れた渋谷ということもあるが、ここで成功できなければどこでやっても無理だろうと考えた。半年ほど物件を探し、スナックだったこの場所を居抜きで借りて2013年10月にオープン。当初は紹介制でInstagramなども鍵をかけていたため、知る人ぞ知るお店であり、お客さんはクラブやヒップホップの関係者も多い。紹介なしでも飲みに行けるようになったのは最近のことだ。

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好きな音楽を聴きながら楽しく飲める場所を目指して

「クラブで遊んだ帰りだったり、働いたりして疲れた人たちが、好きな音楽を聴きながら楽しく飲める場所にしたかったので、ターンテーブルは置かないと決めていたんです」

iPadを操作して、90’sヒップホップ(日本語ラップ含む)やR&B、ニュージャックスウィング、ダンスクラシックなどをボーズのスピーカーから流していく。どれもRICEさんが強く影響を受けた音楽だ。

1975年生まれのRICEさんの地元は杉並区阿佐ヶ谷。お姉さんの影響で小学校の頃からマイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダー、その他レピッシュなど日本のバンドなど幅広く聴いていたという。

「中学でダンス甲子園が流行って、それを録画してダンスの練習をしたりニュージャックスウィングを聴くようになったんです。高校からはアメフトをやるようになって、地元の連中もスケボーをやってたりアメリカものがみんな好きだったんですよ。映画『ニュー・ジャック・シティ』が高校2年だったり」

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ラッパーをやりながら新たなジャンルに挑戦

自らマイクを握るようになったのは、高校卒業後の19歳。その後、盟友となるIQ氏とラップをしていた仲間に「めっちゃ楽しいぞ」と言われ、ラッパーの道へ。居酒屋など飲食店でアルバイトをしながら、アルバムを出したりライブをしたりという日々が続いた。お世話になったのは故デヴラージ氏。そして、30代も後半になる頃に『東京ゴリラ03』をスタートさせる。

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「いわゆるバーはそれまで行ったことがなくて。お店を始めるにあたっていろいろ回ったんですけど、面白さがわからなかった(笑)。それなら自分たちが面白いと思うことを落とし込もうとしたんです」

オープン前には知り合いのバーで短期間働いたが、これまで働いていた居酒屋とは180度違う接客方法に驚いたという。

「やり方、喋り方、雰囲気の作り方、お客さんのつなげ方、何もかも違いました」

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アブストラクトを得意とするDJ SEENとRICEのユニット、RIPE STATE。2023年にはJazzyなトラックに溢れたミニアルバム『STRANGE GATE』を発表した。

音楽とトークでお店のグルーヴを作り上げる

オープン以来、ぶれずに変えていないのはお通しがショット(キャプテンモルガンのラム)であること。もちろん、お酒が飲めない人に強要はしないが、そこを挨拶代わりにRICEさんのトークと音楽で盛り上げていく。

「小さいお店なんで、どうしてもお客さん同士の距離感が近くなってしまうんですよ。そこは気をつけています。こちらとしては楽しく飲んで欲しいだけなんで」

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ひと手間にこだわった人気のチューハイ&サワー

客層は30~40代が中心。男性のほうが少し多いという割合いで、ひとりで飲みに来る人も多い。ドリンクは、甲類焼酎の人気ブランド「キンミヤ」を中心にチューハイやサワーといった居酒屋で人気のものがよく飲まれるとか。

「キンミヤでも美味しく飲んで欲しいので、レモンや緑茶は無農薬のものを使ったり、蕎麦茶も煮出したものを使ったり工夫しています」

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最近は不定期でのフードイベントや、毎週月曜に一日店長を立てるなど新しい試みをおこなっている。また、周年イベントを毎年クラブでおこなっており、そこではお店に遊びに来るDJやラッパーたちが大勢出演する。

ヒップホップは好きだけれど、最近は自分好みのパーティも減って出不精になっている。久しぶりの仲間ともう一軒、好きな音楽を聴きながら楽しく飲みたい。ここはそんな往年のB・BOY、B・GIRLたちにおすすめの隠れ家なのだ。

取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥

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・店舗名 東京ゴリラ03
・住所 東京都渋谷区道玄坂1-17-10 第二宝ビル3F
・営業時間 21:00~5:00、18:00〜24:00(月曜)
・定休日 不定休

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