投稿日 : 2015.12.25 更新日 : 2018.12.28

橋本徹(編集者/選曲家/DJ/プロデューサー)|2015 Best Disk Review -あの人が選ぶ3枚-

橋本徹(編集者/選曲家/DJ/プロデューサー)
SUBURBIA主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは280枚を越える。

選曲の仕事をしていることもあり、今年もCDとレコードを900枚くらいずつ買ったが、ついに時代遅れの僕でさえ、配信オンリーの音源をスルーできなくなったな、と感じたのが2015年の大きなトピックだった(遅すぎますね)。一方でひとまわりして、リスナーとしてはもちろん、仕事面でもアナログ盤に親しむ場面が増えたのは歓迎すべきこと。今回はアルバム単位で選出したが、下記で触れた以外では、ジ・インターネット/ハイエイタス・カイヨーテ/シャソル/ディーゴ/フォニー・ピープル/トロピックス/ピート・ジョセフなどもよく聴いた。

 

  • Kendrick Lamar
    To Pimp A Butterfly

    2015年を代表する一枚なら、やはりこれに尽きるかなと。現行ジャズの充実を伝える意味でもカマシ・ワシントン『The Epic』と双璧。対になる重要作として、ケンドリックもエリカ・バドゥ「On & On」に乗せてラップしてる、同じコンプトンのThe Game『The Documentary 2』も推薦。90sオマージュの一大絵巻で、ボビー・ハッチャーソン「Montara」×バーケイズ「Sang And Dance」にトラックが変わってQ・ティップが入ってくるところで、わかっていてもグッときてしまう。

     

  • Donnie Trumpet & The Social Experiment
    Surf

    配信オンリー作ながら、実はいちばん聴いたのはこれかも。「Rememory」のエリカ・バドゥの歌から大名曲「Sunday Candy」に流れる瞬間、何度聴いても甘酸っぱく胸が疼く。ドレイクやトッド・ラングレン&アイズレー・ブラザーズのリワークも最高だったエリカの最新ミクステのニュー・エディション「Mr. Telephone Man」のしっとりカヴァーにも溶けた。ダウンロード・アルバムでは他に、カマシ・ワシントン/デクスター・ストーリー/カルロス・ニーニョ活躍のギャビー・ヘルナンデスなども愛聴。

     

  • V.A.
    Good Mellows For Moonlight Rendezvous

    僕自身が作ったコンピの数はFree Soul 20周年だった昨年の32枚に比べ半減したが、今年は『Good Mellows』シリーズを立ち上げ、日本のみならず海外でも好評を博したことが嬉しかった。先駆けて出た前2作も含め2015年の自分が詰まった至福のメロウ・チルアウト・コンピ。去年成功した『2010s Urban』シリーズもそうだが、現在進行形で聴き、DJプレイしている音楽が仕事にもなるのは幸せなことだ。随分ささやかではあるけれど、Free Soulを始めた頃のような気分を少し味わえた。感謝!