投稿日 : 2020.08.28

【東京・神田/Bar SLIGHT】不思議なギャップが心地良い ジャズバー

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

Bar SLIGHTの写真1、いつか常連になりたいお店Vol.49
いつか常連になりたいお店 #49

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、R&Bやヒップホップ、テクノ、ハウスなどさまざまな音楽からジャズにたどり着いた、若き店主による『Bar SLIGHT』を訪問。内装のイメージとは違い、肩肘を張らないカジュアルさが魅力の、和やかに過ごせる空間でした。

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3つの駅が使える立地の良さが決め手だった

最寄駅はJR 新日本橋駅ではあるものの、神田駅や三越前駅からも歩いてすぐの場所にある『Bar SLIGHT」。2020年4月27日にオープンしたばかりの同店は、日銀通りから小道に入ったビル3Fに位置する隠れた場所にある。

「当初は、渋谷エリアか新橋や銀座といったオフィス街で探していました。この場所に決めたのは立地の良さですね。日本橋に新しい商業施設ができて外国人も増えそうでしたし、大手町のサラリーマンはこの周辺で飲むことが多いと聞いていたので。また、神田の猥雑とした雰囲気や落語が好きということもあります」

そう語るのは店主の笹木皓太さん、1991年生まれとまだ若い。かつては高級ラウンジだった居抜き物件ということもあり、カウンター&チェア、バックバーはそのままの状態で使っている。それ以外のスペースは壁面を黒く塗り、テーブルやソファを新たに揃えた。

「理想としてはすべてをオーセンティックな雰囲気にしたいんです。でも、この白いギラギラしたカウンターに、僕のようなカジュアルな人間が入っていたら面白いギャップかなと思って。コロナ禍でのオープンということもあって、とにかくまず走り出そうと。当分はこのまま行こうと思っています」

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オープン時はコロナによる自粛期間だったこともあり、周囲はどこもお店を閉めていた。そこで、急遽ランチ営業を始め、近隣の方々に少しでも知ってもらおうと心がけたという。ちなみに現在もランチ営業は続けている。

店主も納得のサウンドシステム

バーカウンターで6席、テーブル席で10席、窓際に6席(立ち飲み可)と店内は広め。ゆえにさまざまな使い方ができるのが魅力だ。スピーカーは田口音響研究所で、アンプはスウェーデンのラブグルッペン。そこに自宅で使っていたパイオニアのターンテーブル(PLX-500)2台と、チューンアップしたベスタクスのロータリーミキサー(PMC-26)でレコードを鳴らしている。

「以前、月イチでDJをしていた場所にあったスピーカーに惚れて、同じものを注文しました。また、その店のサウンドデザイナーをしていた方と知り合えたので、アンプやケーブル類もお任せしました。低音がしっかり出ながら高音が柔らかく、中域もすごく伸びる音響で、音の立ち上がりもすごく早いんです。ジャズのアルバムは人の声が入っていることが多いですが、そういう音もクリアに聞こえるので、誰か入ってきたのかと勘違いすることもあるんです」

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新旧のジャズを中心に、ブラックミュージックとハウスが少々。店内には約300枚のレコードが用意されている。

「ジャズに関しては、ハードバップと最近のアーティストが多いですね。真ん中の時代がすっぽり抜けている感じ。新譜に関してはアビシャイ・コーエンのような正統派から、エズラ・コレクティヴのようなクロスオーバー系のアーティストまで、できる限り揃えるようにしています。というのも、僕がジャズを好きになるきっかけがサンプリングだったので、新しいものをしっかりかけていきたいんです」

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アルバム1枚をすべてかけるのがポリシー

お客さんの層は20~40代が多く、お店の雰囲気を見ながら選盤をしていく。ジャズ好きと思われるお客さんには、自慢のサウンドシステムで味わって欲しいという意味を込め、ジャッキー・マクリーンやケニー・ドリューをかけることが多いとか。また、どのレコードも両面すべてかけることをポリシーとしている。

「アルバムを通して聴く行為ってどんどん減っていると思うんです。だからこそ、アーティストの思いが詰まった流れですべて聴きたい。また、ジャズはA面とB面でメンバーが違うことも多くて、そういうのも面白いなと思っているんです」

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ここまでの話だと、店主は堅物のジャズマニアのように感じるかもしれない。しかし、パーティ・ラップ系グループのATAMAHEADや、D.T.B(ドツボ)というグループでラップ活動をするなど経歴はなかなかユニークだ。

「両親が音楽好きで、子どもの頃から家のCDをいろいろ聴いていました。自分で選ぶようになってからはメロコアにハマって。その一方で、バスケ部だったこともあって、NBAやストリートバスケの動画の影響からヒップホップが好きになったんです。その頃は黒人になりたいと思っていました(笑)」

大学進学後は劇団に入り、俳優志望のまま留年生活が3年も続いた。しかし、25歳で結婚。それを機に大学を中退し、俳優も辞め、人生のリセットを図る。

「知らなかったことをいろいろやろうと思って。そこから友達に誘われてラップを始めたり、音楽もテクノやハウス、タンゴやシャンソンなどとにかくいろいろ聴きました。そのなかで、ムードマンというDJが大好きになって、彼が『OATH』というDJバーでプレイするというので行ったんです。そのアンダーグラウンドな空間に”なんじゃこりゃ!”という衝撃を受けて、”通うよりも働こう”とすぐに面接を受けました」

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自分が好きなものはすべてジャズでつながっていた

『OATH』は青山学院の近くにあったDJバー、その後『RED BAR』と店名を変えて業態もミュージックバーに近いものとなる。そこでの毎日が、笹木さんを大きく変えることになった。

「25歳のリセット期から、漠然とバーをやりたいと思っていたんです。その後、『RED BAR』で毎日いろいろな音楽を聴いているうちに、ヒップホップだろうとテクノだろうとジャズをサンプリングしている曲があって、自分はそこで使われているジャズの生音が好きなんだと気付いたんです。僕が影響を受けてきたさまざまなものは、ジャズの一点で繋がっている。それからジャズにのめり込んでいきました」

そして、2020年4月にジャズが流れるミュージックバーをオープンさせたというわけだ。

「お客さんにとって、この店が何かしらのキッカケになってくれればと思うんです。自分と同年代であれば、バーに行くきっかけ、いい音で音楽を聴くきっかけ、美味しいお酒を知るきっかけとか。ジャズに関しては情念が詰まった音楽だと思うし、それがビシビシと伝わってくるのが魅力。なので、音楽の力で自然と会話が止まったり、つい踊り出してしまったり。しっとりいい気持ちになるだけでなく、心や体が動かされる体験が生まれる場所になればいいなと思います」

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・店名 Bar SLIGHT
・住所 東京都中央区日本橋本石町4-4-15 平和本社ビル3F
・営業時間 11:00~24:00(月曜~木曜)、11:00~29:00(金曜)、13:00~24:00(日曜)
・定休日 土曜
・電話番号 03-6262-1520
・Facebook https://www.facebook.com/SlightKanda/
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