いま本当に売れているイヤホン&ヘッドホンはこれだ!【ARBAN的オーディオ案内 vol.7】

取材・文/川瀬拓郎  撮影/石井文仁

2018.11.15

左右のハウジングが独立した“完全ワイヤレス型イヤホン”の需要が、急激に高まっている。その発端になったのは、2016年12月に発売されたアップル「AirPods」。さらに、同年発売の「iPhone7」がイヤホンジャックを廃止。他のスマホもこれに追随し、イヤホンのワイヤレス化に拍車をかけた。

家電量販店やネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、今年3月の“完全ワイヤレス型イヤホン”販売台数は、前年比の10倍以上。この伸びとともにイヤホンの平均単価も2倍以上に上昇し、近年、停滞気味だったイヤホン市場に活況をもたらしているという。

こうした“イヤホン勢力図”の変化を、最も鋭敏に“売り場”に反映しているのが、イヤホン&ヘッドホンを専門的に扱うショップ「eイヤホン」である。

世界随一の品揃えを誇る旗艦店へ


今回取材に訪れた「eイヤホン」秋葉原店。東京メトロ銀座線の末広町駅から徒歩2分、JR秋葉原駅から徒歩5分。大手国内メーカーの最新モデルはもちろん、海外高級ブランドやキックスタート系ブランドまで、幅広いラインナップを誇る。また、イヤホン/ヘッドホンの修理や修繕(事前の問い合わせが必要)をはじめ、ユーザーの耳型を採取したオーダーメイドのイヤホン作成も受け付けており、多くのミュージシャンや有名人も来店。

同店最大の特徴は、取り扱い商品およそ2万4000点のうち、約4000点ものイヤホン(ヘッドホン)を、試着&試聴できること。ネットでの買い物が当たり前になった昨今だが、イヤホンやヘッドホンは「身体に装着するもの」かつ「個々の聴覚で判断するもの」であるため、靴や帽子やメガネのように実際にフィッティングしてみないと買いにくい物品である。まして高額なワイヤレスイヤホンなら、なおさら。

今回は、そんな日本最大級の専門店「eイヤホン 秋葉原店」を訪問。同店の中里氏をナビゲーターに迎え「本当に売れているイヤホンとヘッドホン」とその特色を聞いた。

※記事内の価格はすべてeイヤホン秋葉原店での店頭価格。

予想外のブランドが上位に!
──ワイヤレスイヤホン編──

まずはイヤホンの売れ筋ベスト3を紹介。ひとくちに「イヤホン」と言っても多種多様なタイプがあるが、ここでは、左右のハウジングが独立した“完全ワイヤレス型イヤホン”の人気商品を取り上げる。

業務用の実績を民生機に投入

同店で9月から売り上げの首位を独走しているのが、ジャブラ(Jabra)の「Elite 65t」(2万4980円)だ。今春の発売以後、じわじわと上り調子となり、新色が追加されたことで人気が加速。

「完全独立型で、Bluetooth特有の音切れがほとんどなく、多機能というのが強みです。音質面も優れていて、特に高音域の再現力は抜群。このメーカーはもともと業務用ヘッドセットの製作で実績があるので、スマホ連動の通話品質も優秀です。通話時に気になる風切音がほとんどなく、音楽から通話へスムースに移行できます」(eイヤホン 秋葉原店・中里氏 ※以下、文中の発言はすべて同氏)

また、約5時間の連続再生が可能で、メーカー保障期間が2年間付いているというのも、他メーカーと比較した際の大きなアドバンテージに。

“完全ワイヤレス”の先駆メーカー

首位を追いかけるのは、イヤーイン(EARIN)の「M-2」(2万7952円)というモデル。2013年にスウェーデンで設立した新興メーカーの製品である。

「あまり知られていませんが、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンを初めて製品化したキックスタート系ブランドです。カナル式(注1)の中では比較的小さなモデルなので、耳孔が小さい女性からも支持が高い。LRの設定がなく、どちらの耳に挿し込んでも、イヤホンが自動的に位置を察知してくれます」

注1:耳穴の奥まで挿入して使用する、耳栓型のイヤホン。本体を耳介に乗せて装着する「インイヤー式」よりも遮音性が高いなどの特徴がある。

前モデルのM-1からM-2への後継で進化した点は、操作がタッチセンサー式になったこと。コンパクトに収納できる円筒形の充電ケースもスタイリッシュだ。同店での取材によると「1万円台で完全独立型のワイヤレスイヤホンを探しにきたお客さんの多くは、実際に試聴して装着感と音質を確かめると、2万円台のモデルに落ち着くことも多い」とのことで、イヤリン「M-2」はその代表とも言える。

スポーツタイプも人気

3位は、デンマークのメーカー、ジャブラ(Jabra)の「Elite ACTIVE 65t」(2万6870円)。先に紹介した「Elite 65t」の兄弟機である。基本性能はほとんど同じだが、こちらは汗や水に強いスポーツタイプ。

「予約も多く、入荷するたびに売れて行くモデルです。年末にかけて今後ますます人気が伸びることが予想されます」  

ベスト3のうち2枠を海外メーカーのジャブラが占め、残る1枠も海外キックスターター系。専門店ならではの(家電量販店のセールス傾向とは違う)結果とはいえ、あまりにも予想外であった。

日米英の個性きわだつトップ3
──ワイヤレスヘッドホン編──

外耳全体を覆うハウジングをヘッドバンドで連結した、いわゆる「ヘッドホン」タイプでも、魅力的なワイヤレス製品が続々登場。

安定のスタンダード機

そんなヘッドホン部門の首位はソニーの「WH-1000XM2」(2万9800円/在庫分のみ)。昨年10月に発売された本機は、従来機「MDR-1000X」の美点を継承しつつグレードアップ。すでに“ノイキャン&ワイヤレス”ヘッドホンにおけるスタンダードとも言える人気モデルだ。

「M2になって進化したのは、ノイズキャンセリングの機能面。気圧の変化を自動的に判別し、ノイズキャンセリング効果を最適化する機能が追加されました。特に飛行機内では効果絶大。同価格帯の有線モデルと比べても、ほぼ同等と言っていいくらいの高音質は、さすがソニー。Bluetooth接続で音楽を楽しむなら、どんな音源でも正直この一台で事足りてしまうほど」  

ここへ来て、ようやく日本のオーディオブランドがその存在感をアピール。一般的なリスナーから熱心なオーディオファンまで納得させる音質、使い勝手の良さ、先進的なノイズキャンセリング機能は、他の追随を許さない。また10月には後継機となる「WH-1000XM3」が販売開始に。音質、装着感、ノイズキャンセリング機能などがより進化した、この冬の注目製品となるはずだ。

“特殊効果”搭載モデルも

首位のソニーを“優等生”と捉えるなら、2位のスカルキャンディ(Skullcandy)は、クラスで人気の不良みたいな存在かもしれない。

「こちらのCrusher Wirelessというモデル(2万1190円)は、低音に合わせてサブウーファーが振動するという、ユニークな機能を持っています。いかにもアメリカのブランドらしく、ヒップホップやいまどきのポップスを聴くのにちょうどいい。特に10〜20代のユーザーさんにウケています。振動させる機能はスライダーで10段階に調整でき、約40時間の連続再生ができるというのも人気の秘密」

20年以上前にパナソニックが発売した「SHOCK WAVE(通称)」という、重低音でヘッドホンが振動するポータブルカセットプレイヤーがあったが、その現代版と言ったところか。一部のオーディオファンからは邪道扱いされてしまいそうだが、まさに頭蓋骨ごと揺さぶられる音楽体験はトライする価値あり。

“ハイエンド”の威力

3位にランクインしたのは、イギリス生まれの高級スピーカーブランド、バウワース・アンド・ウィルキンス(Bowers & Wilkins)のノイズキャンセリング・ヘッドホン「PX」(4万9572円)。

「ちょっと価格帯が上がりますが、音質にこだわるお客さんから支持を得ています。金属を多用したデザインと、ハイエンドスピーカー・ブランドらしい高音質がウリです。ドラムのキック音をはじめ、低音の出し方が上手。取り扱うオーディオ店が少ない上に、試聴する機会も限られていますが、eイヤホンなら存分に試聴していただけます」  

やはり5万円クラスの上位機種となると、ワンクリックで済ますわけにもいかず、こうした試聴の場を設けることは販売数にも大きく影響するのだろう。高級感あふれる佇まいとハイエンドブランドらしい音質はもちろん、状況に合わせた3つのノイキャン・モードや、イヤーカップを耳から外すと自動的に音が止まるセンサー機能など、使い勝手の良さも見逃せない。

屋内外のポータブル最高峰はこれだ
──ワイヤレススピーカー編──

ポータブル・スピーカーもeイヤホンの守備範囲。ここでは番外編として、ワイヤレス小型スピーカーの人気商品を紹介したい。

抜群のバランス誇る人気モデル

デスク周りやアウトドアなど、用途による特性も幅広いワイヤレススピーカーだが、やはりこの分野でも「安定した人気を誇る大手ブランド」と「eイヤホンらしい個性派ブランド」が混在。Bluetooth接続のポータブル・スピーカーでは、JBL「XTREME2」(2万9043円)が首位に。

「もはや定番中の定番と言ってもいいでしょう。“家電量販店で人気の機種”が当店のランキング上位に入ることは稀ですが、ポータブル・スピーカー部門では圧倒的な人気です。音量もしっかり出せるし、音質/価格/サイズ感の総合的なバランスがいいのが首位を独走する理由だと思います」  

屋外使用も安心のIPX7(水の中に浸しても問題なく作動)を誇り、堅牢なボディと相まって、何かと使い勝手のいい1台に仕上がっている。約15時間もの連続再生に加え、2台同時接続してステレオ再生も可能。ショルダーストラップの金具には栓抜き機能も付くなど、まさに至れり尽くせり。

リスニングの可能性広げる高級機

屋外用のワイヤレススピーカーばかりが話題になるが、屋内用のハイエンドモデルとして人気が高まっているのが、ヴェクロス(VECLOS)の「SSB-380S」(14万9040円)というデスクトップ用スピーカーだ。

「魔法びんで有名なサーモスが取り組んでいる、新しいオーディオブランドです。同社の金属加工技術をオーディオに転用した、真空エンクロージャーが最大の特徴。約15万円と非常に高額ですが、音質とデザインの良さ、設置や接続に手がかからないこともあって人気急上昇のモデルです。高品位なヘッドホン用アンプとしても活躍します」  

これまで一部のミュージシャンにしか縁がなかったDTMが、かつてなく初心者にも容易に扱えるようになった現在。こうしたPCでの音楽再生を前提とした据え置き型スピーカーの需要が再燃しているのが面白い。しかも、そんなニッチな需要に答えたのが、魔法瓶で有名なメーカーだというのだから驚いてしまう。

価格に見合わない(?)実力

どんなプロダクトにおいても言えることだが、低価格がウリの商品にはそれなりの理由があって、“安物買いの銭失い”という結果に繋がりがちだ。ことオーディオにおいてそれは顕著で、価格は音質そのものを意味し、見た目にもそれが露骨に現れる。しかし、そんな定説を覆す総合電子製品ブランドがタオトロニクス(TaoTronics)である。なかでもこのポータブル・スピーカー「TT-SK09」は人気が高い。

「まず、2999円というプライスが衝撃的。低価格帯のオーディオはやっぱり“それなり”でしかないという、これまでの常識を打ち破る音質の良さが評価されています。コンパクトなボディながら、しっかり音量を出してくれますし、防水(IPX4)と耐振動性能も備えているので屋外の使用も安心。何気なく来店したお客様の多くに購入していただいています」  

筆者もその価格につられて購入。実際に視聴してみたところ、予想外の音質に驚いた。高音から低音までバランスが良く、大きめの音量で聴いても、この小さな筐体とは不釣りあいなほどリッチな量感。無駄を削ぎ落とし、洗練されたデザインも申し分なし。デスク周りやアウトドアだけでなく、浴室でも重宝しそうだ。

イヤホンの未来を示す新ジャンル?
──注目すべき新機構デバイス──

ここまで、こだわり派に人気のワイヤレスイヤホン&ヘッドホンを紹介してきたが、もうひとつ、注目すべき新しいリスニングスタイルも紹介しておきたい。

こちらは骨伝導を利用したイヤホン(ヘッドホン)。AfterShokz(アフターショックス)という新興ブランドによる製品「TREKZ TITANIUM」(1万9310円)である。通常のイヤホンのような気導音(鼓膜を振動させて感じる音)ではなく、骨導音(骨を伝わって感じる音)を利用するため、耳孔が解放された状態で音楽を聴くことができる。

装着時の(スピーカー部の)ポジションは顎関節のやや上。スピーカーユニットが作り出した音を頬骨に伝え、これを蝸牛(かぎゅう)から聴神経へ伝えるという機構になっている。

「耳孔を塞ぐことなく、音楽が楽しめるイヤホンです。周囲の音を把握できるので、ランニングをはじめとする屋外でのスポーツに最適。しかもこのモデルは(骨伝導スピーカーの欠点でもある)音漏れも少ない。骨伝導式ワイヤレスホンは今後伸びていく、新しいカテゴリーと言えるでしょう」

音質面ではまだまだ発展途上であるが、なにより“耳孔が解放される”ことで広がる可能性は大きい。釣りやハイキングといった、自然音も聞きたい&コミュニケーションが欠かせないアウトドアスポーツには最適。ランニング時の使用では、車やバイクの接近を察知できるというメリットもある。

また、屋内使用においても、公共機関のアナウンスや、電話の着信、チャイムやアラーム、子供の声など、聞き逃しを防ぎたいシチュエーションでかなり重宝するだろう。

生活に密着する“音声アシスト端末”

こうした“ながら聴き”とでも言うべきリスニングスタイルを、さらに推し進める製品をもうひとつ。ソニーのXperia用ヘッドホン「Ear Duo」(2万3863円)である。

「こちらは骨伝導式ではなく、ソニー独自の“音導管設計”を採用。周囲の音を遮断することなく、音楽や通話を楽しむことができます。何か別のことをしながら音楽を楽しむという、新しいニーズを開拓した商品です」

人間工学に基づいた、耳への負担が少ない装着スタイルや、ハンズフリーにも対応する直感的な操作など、先端のテクノロジーが凝縮した一台。なにより、その用途を“音楽鑑賞”に限定せず、LINEの操作やメールの読み上げなど、生活に密着した“音声アシスタント端末”として設計されている点が重要である。今後のワイヤレスイヤホン市場の情相に大きな影響を与える存在かもしれない。

「ながら聴き」の未来

このような“ながら聴き”を可能にする、新たなカテゴリーのイヤホンやウェアラブル・デバイス。これは「ヒアラブル(注2)」の呼称で世界的に注目されている分野である。

注2:音声だけを用いるウェアラブル・デバイスのこと。ヘッドホン(Headphone)とウェアラブル(Wearable)を組み合わせた造語。

 現在のウェアラブル端末のシェアは、アップルウォッチなどに代表される「腕時計型」が主流だが、今後は「耳掛け型(ヒアラブル)」が急速に伸びると予測されている。無線ネットワークのコンサルティングや情報収拾をおこなう英国の機関「ワイヤレス・コンサルティング」の報告によると、2020年までにヒアラブル・デバイスの市場規模は4.5兆円。現在の4倍近くにまで成長するという。

同様の近未来予測は多くの調査機関によってなされており、イヤホンは今後、音楽を聴くためだけのデバイスではなく、さまざまな情報やサービスを受ける端末として、スケジュールや健康管理、交通案内や翻訳システムなどとも連動。さらに近い将来、AIエージェントとの対話や、知覚を補助するツールとしても発展するだろう。

ウェアラブル端末のこうした流れは、現在の「目と手」を使うディスプレイ主体のものから、「耳と口(ヒアラブル)」へ移行し、目と手がフリーになる(最終的にはアイウェアと合体する)ことを示唆している。これが、近い将来に実現するであろう“ながら聴き”の最終形態である。

完全独立型ワイヤレスイヤホンの市場は、今後ますます“高音質・低価格・小型化”競争が激化するはずだが、同時に「音楽鑑賞以外」の機能付加合戦も熾烈化するのだろう。


eイヤホン秋葉原店


住所:東京都千代田区外神田4-6-7 カンダエイトビル4F
電話 03-3256-1701
営業時間 11:00~20:00(年中無休)
https://www.e-earphone.jp/

 

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