【CAFE INCUS/カフェ インカス】 音楽とインテリアが緻密にコーディネートされた空間で味わう自家焙煎珈琲

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

2018.09.28

いつか常連になりたいお店 #29

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は自家焙煎によるサイフォン式コーヒーが楽しめる『CAFE INCUS(カフェ インカス)』を訪問。フリージャズを中心としたヨーロッパのジャズが似合う、細部までこだわり抜いた店内はまさに常連になりたくなる雰囲気がありました。

男心をくすぐるバランスのいい空間

JR御徒町駅と秋葉原駅の中間地点にあり、最寄りは地下鉄銀座線の末広町駅。そこから徒歩約5分という位置にある『CAFE INCUS(カフェ インカス)』。2018年2月末にオープンしたばかりだが、すでにジャズ好きを中心に大きな話題となっている。しかし、店主の中野創一さんは「ジャズ喫茶ではないので、そう思って来られるとがっかりされると思いますよ。あくまでも自家焙煎珈琲の喫茶店ですから」と語る。

ブルーグレーを基調とした、英国の靴店やアイリッシュパブのような外観。扉を開けると市松模様の床と、スタッズ使いの重厚なレザーチェアが目に飛び込んで来る。どれもインテリアとしてうまくまとめるのは難しいアイテムだが、すべてに統一感のあるスタイリッシュな空間となっている。入口近くには自家焙煎機が設置され、カウンターにはサイフォン機が並ぶ。

「サイフォンの大きな魅力は視覚効果、フラスコのインパクトは大きいですよね。これに勝るものはエスプレッソマシーンしかない(笑)。サイフォンは湯温調整が効かないので、焙煎が重要になってくるんです」

酸味を程よく抑えた中浅煎りの味わい

現在、珈琲豆に関してはブレンドの他に、ブラジル(プレミアムショコラ No2)、グアテマラ(ゴールデンバレンシア SUP)、コロンビア(ウィラ スウィートベリーSUP)、マンデリン(ビンタンリマ G1)、エチオピア(ベレカ G1)の5種類を用意している。欧米のカフェのように朝7時とオープン時間が早く、テイクアウトもおこなっているので気軽に利用できる。

「スペシャルティ等級のコーヒーを揃えていますが、シングルオリジン(同じ農場であること)であることにはこだわってないです。いずれは今週のサービスコーヒーなどもやっていきたいですね」

気になる店名の『INCUS』は、ICPやFMPと並び3大ヨーロッパフリーのひとつである英国のレーベルから名付けられている。インプロビゼーションがメインで、メロディや定型リズムがほとんどないフリージャズに中野さんが興味を持ったのは10年ほど前。

インディーロックからフリージャズへ

「最初はジャズという意識はなかったんです。中学生くらいから、イギリスやアメリカのインディーロックが好きになって。雑誌の『ロッキンオン』やCDのライナーノーツを熱心に読んで、そこに出てくるミュージシャンを聴いて、さらに枝葉を伸ばしていくみたいな。インターネットがない時代の王道ですよね」

そんななか、ブラックフラッグのヘンリー・ロリンズや、ソニックユースのサーストン・ムーアなどの口から、ジョン・コルトレーンやアルバート・アイラーといった名前がたびたび出てきたことからフリージャズに興味を持つようになる。当初は、「ギターの代わりにサックスを吹いている人がいる」というような感覚だった。

「ジョン・ゾーンは、ナパーム・デスのドラマーでもあったミック・ハリスが共演していた流れで聴くようになったんです」

自分が好きな音楽が、ジャズの系譜にあると強く意識するようになったのは、西新宿にあるハルズ・レコードに通うようになってから。ここに入荷するヴィンテージレコードを試聴しながら、店主からいろいろな音楽を学んでいった。

音楽はあくまでもBGMとして

現在、店内には60~70年代のヨーロッパジャズを中心に約1500枚のレコードが置かれている。音響に関しては、『オーディオ ドリッパー トーキョー』という個人経営のオーディオ屋さんに音質やデザインの好みを伝え、基本的にはお任せで揃えた。JBL C50SMにマッキントッシュのアンプなど自慢の機器が揃うが、店内の音量は絞られており、とくに平日の昼間はハードな楽曲はかからないという。

「あくまでもBGMですので。朝、お客さまがいないときには好きなものをかけていますけどね(笑)」

お客さんの7割は近隣の住人、残り3割が音楽を聴きに足を運んでくる。一方、週末はその割合いが逆転する。曲は店内の雰囲気や天候を見ながら選んでおり、リクエストには対応していない。あくまでも喫茶店として存在することを望んでいる。

「学生時代からずっとカフェをやりたかったんです。お店をオープンするにあたって意識したのは月光茶房さん。日本で一番かっこいい喫茶店だと思います。コーヒーを大事にされていて、音楽もいいし、ああいう佇まいは参考になります」

『CAFE INCUS』も負けず劣らず、店主の美意識の高さ、デザインへのこだわりが見て取れる。これは間違いなくファッションも好きに違いないと感じた。

「物心ついた頃から大好きです。もともとはモッズから入ったのでイタリアの服をつい選んでしまいますね。フィナモレやバルバといったナポリのシャツや、インコテックスやPT01のパンツがお気に入り。あと、ダブル アールエルもつい買ってしまうんですけど……着て歩いたことはないんですよ(笑)」


・店舗名 CAFE INCUS

・住所 東京都台東区上野5-5-2

・営業時間 7:00~21:00、9:00~18:00(土日)  定休日 無休

・電話番号 03-6803-2715

・オフィシャルサイト https://cafe-incus.business.site/