投稿日 : 2017.10.20 更新日 : 2020.11.25

【東京・東日本橋/CITAN】「街」と共存する日本橋の悦楽カフェ&ダイニング

取材・文/富山英三郎 写真/高瀬竜弥

いつか常連になりたいお店|You And The Night And The Music #18

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は東日本橋(東京都中央区)にあるホステル『CITAN(シタン)』内にある、カフェおよびバー&ダイニングを訪問。週末の夜にはDJが入り、ラウンジ感覚で素敵な時間が流れていくふらり寄りたいお店なのです。

ホステルによるオープンな空間

 小間物や繊維の問屋街として知られる、日本橋横山町や大伝馬町。このエリアはオフィス街でもあるため、ビジネスホテルも点在している。

 そんな場所に、2017年3月にオープンしたホステルが『CITAN』だ。ホステルとは大まかに言うと、ホテルよりもカジュアルな雰囲気で、ドミトリータイプの部屋(相部屋)も用意されている宿泊施設を指すことが多い。『CITAN』もまた、ドミトリータイプが全体の6割、個室が4割となっており、シャワーやトイレは共用となっている。

「宿泊の7割近くは海外のお客様で、欧米とアジアの方々が半々程度です。おかげさまで週末はほぼ満室状態となっています」(マネージャーの清水さん)

 1Fには『BERTH COFFEE』というカフェがあり、ここではスペシャルティコーヒーや、朝食、スイーツを楽しむことができる。オニバスコーヒーの豆がレギュラーだが、もうひとつゲストロースター枠があるのもユニーク。これは宿泊したゲストとの縁など、いろいろなつながりの中で出逢ったコーヒー豆がシーズンごとに入れ替わるというもの。

 また、地下のスペースもラウンジとして解放しているので、美味しいコーヒーを飲みながら思い思いの時間を過ごすことができる。そして18時からは、その地下スペースがバー&ダイニングとして営業されるのだ。取材日にはちょうど、1Fエントランス部分で軽食や野菜の販売もおこなわれていた。

「これは毎月第2水曜の昼にやっている”Meal caravan”というイベントで、さまざまな飲食店さんに出店いただいています。近隣で働く方々のランチとしても喜ばれています」(清水さん)

 建物の1Fを飲食などのオープンスペースにして、街と共存させていくスタイルはここ最近のトレンドでもある。さらに、施設と近隣住民、海外からの旅行者など、さまざまな人をつなぐ要素として「音楽」が媒介するというのも自然な流れだ。

「ここはもともとシャツメーカーさんの本社ビルだったんです。そこにたまたま地下があり、その空間をうまく活かすために、音楽にもより力をいれようということになったんです」(マネージャーの清水さん)

最高の音響とDJを誇るラウンジ

 『CITAN』のB1にあるバー&ダイニングでは、毎週金曜と土曜の20:00~、BGMをDJが担当。これまでに沖野修也、松浦俊夫、須永辰緒、DJ NORI、DJ KAWASAKI、MURO、クボタタケシなど錚々たるメンバーがプレイをしている。

「クラブやディスコではないので、あくまでもラウンジスタイルのDJができる方にお願いしています。当初はジャズ系の方が中心でしたが、最近はどのジャンルでも場の空気を理解していただける方のプレイであれば、素敵な空間になることがわかったんです」(企画運営の竹原さん)

 オープンから3ヶ月は沖野修也さんが音楽プロデュースを担当。音響周りにもこだわっており、スピーカーには『タグチクラフテック』のものを採用している。しかも、メインスピーカー6個、ロースピーカー5個、無指向性のペンダントスピーカーが5個と贅沢な装備。キャスターで移動でき、カウンターを兼ねた蓋つきのDJブースも特注。また、アウトプット端子が床下を通り、PA卓までスムーズにつながるように設計されているというこだわりも。

「音響に関しても、あくまでラウンジとしてストレスのない音を目指しました。どこで鳴っているのかわからない設計になっています。また、バーカウンター、ソファ、メインとチャンネルを3つに分けているので、DJが入っているときも会話を楽しみながら食事ができます。原音再生能力が高く、皆さんから好評をいただいています」(竹原さん)

 通常のBGMは、企画運営の竹原さんとBERTH COFFEEのバリスタでDJもする磯崎さんが選曲。ジャズやラテン、ボッサなど、ナチュラルで柔らかな音楽が小音量で流れている。それらは頭の上で鳴っている感覚があり、心地よい時間が流れる。
バー&ダイニングのある地下は、不定期でアコースティックやジャズのライブイベントも開催。その場合はエントランスフィーがかかるが、毎週末のDJタイムはノーチャージ、エントランスフリーで楽しめるのも嬉しい。

ワインやウイスキーが豊富に揃う

「日本橋という街の雰囲気や、より幅広い年齢の方にも楽しんでいただきたいという思いから、CITANではワインやウイスキーに力を入れています。ウイスキーはシングルモルトやスコッチなどを含めて40種類程度。フードは季節によって変わりますが、パエリアやフィッシュ&チップスなどみんなでシェアできるものが人気です。一方で、おひとりで宿泊されている方も多いので、パスタや丼ものなどのメニューも揃えています」(清水さん)

 オフィス街だけに週末の人通りは少ないが、近隣住民たちの憩いの場となっている『CITAN』。最近は近所に住むレコードコレクターにDJをお願いすることも増えているとか。宿泊者の立場から考えても、自分が泊まっているホステルの1Fに地元の人が利用するカフェがあり、夜は最高のDJがプレイするバー&ダイニングがあれば良い思い出になるだろう。

 運営会社のBackpackers’ Japan(バックパッカーズ ジャパン)は、これまでに台東区下谷の古民家を改装したゲストハウスや、台東区蔵前の倉庫をリノベーションしたホステル。また、京都の河原町でもホステルを営んでいる。彼らのコンセプトは、「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。」というもの。『CITAN』もまさにそういった雰囲気が感じられる素敵な空間だ。オリンピックに向けて、東京にはこういう場所がどんどん増えていきそうだ。

・店舗名/CITAN
・住所/東京都中央区日本橋大伝馬町15-2
・営業時間/BERTH COFFEE 8:00~19:00/Bar & Dinning18:00~24:30、22:30(フードL.O)、24:00(ドリンクL.O)
・定休日/無休
・電話番号/03-6661-7559
・オフィシャルサイト/https://backpackersjapan.co.jp/citan/

当コーナーでは、読者の皆さまから「音楽に深いこだわりのある飲食店」の情報を募集しています。
関東近郊のカフェ、バー、レストランなど、営業形態は問いません(クラブ、ライブハウスは除く)。 下記メールアドレスまでお問い合わせください。

info@arban-mag.com

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