【KAKULULU/カクルル】“カフェミュージックのあり方”を再提示…ジャズマンにも愛される店

取材・文/富山英三郎  写真/高瀬竜弥

2018.05.25

いつか常連になりたいお店 #25

「音楽に深いこだわりを持つ飲食店」を紹介するこのコーナー。今回は「東池袋にあるおしゃれなカフェ」では済まされない、00年代のカフェ文化愛と音楽愛にあふれた『KAKULULU(カクルル)』を訪問。多くのジャズミュージシャンが来店&演奏する理由を探りました。

かつての新聞配達所をリノベーション

旧豊島区役所を中心とした再開発により、オフィスビルやシネコン、タワマンなどの建設が続いている東池袋(東京都豊島区)。そんな話題のスポットに、2014年にオープンした『KAKULULU(カクルル)』。コーヒー・ミュージック・ギャラリーを謳う同店はY字路の角にあり、目印となる大きなモッコクの木、そして外壁に蔦が絡まるおしゃれな雰囲気を醸し出している。

建物はB1がギャラリースペースで1~2Fがカフェ。3~4Fには他社のオフィスが入居している。サンシャイン60の裏手なので池袋駅からも歩けるが、東京メトロ有楽町線の東池袋駅からは徒歩約2分の好立地にある。

「ここはもともと新聞配達所だったんです。当初は自分たちで内壁を塗っていたのですが、お客さんからどう見えるのかが不安になって、途中から山形のアトリエセツナという家具デザイン事務所にお願いしたんです」と語る店主の高橋 悠さん。

カフェで働きながらミュージシャンを目指した日々

兄がターンテーブルを買った影響もあり、中学1年くらいからレコードを掘るようになった高橋さん。彼が10代の頃はカフェブームということもあり、レコードを買ってお気に入りのカフェに行くのが定番コース。以来、音楽とカフェは身近な存在となっていく。

はじまりはヒップホップ一辺倒だったが、高校時代に友人がくれたミックステープにゲッツ/ジルベルトやゴンチチが収録されていたことでブラジル音楽に興味が生まれ、翌週には中古のガットギターを購入していたという。

「音楽の専門学校に通ったのは1年でしたが、伊藤ゴローさんの元でギターを習ったり、菊地成孔さんのペンギン音楽大学で音楽理論を学んだり、ミュージシャン志望として活動していました。その後、企業向け動画のBGMをノンクレジットで制作しながら、ずっとカフェで働いていたんです」

カフェブーム黎明期の“ごった煮感”が好き

その後28歳のときに一念発起し、音楽活動をすべてやめて『KAKULULU』を立ち上げることに。◯◯風といった表現をするのは難しいが、ウッドを巧みに使ったゆったりと落ち着く空間は、2000年代初頭のカフェを彷彿とさせる雰囲気がある。

「内装に関しては、雑誌の切り抜きをスクラップしたイメージブックを渡して、あとはお任せでお願いしました。コンセプトを言語化してしまうと面白いものができない気がしたんです。これは後から気づいたのですが、カフェブームの頃は絵の展示やライブがあったりと、カフェには雑多なところがあった。それから約10年の間にパンケーキやコーヒースタンドなど専門化されていったんです。自分はカフェブーム期のごった煮感が好きなので、そこは意識しています」

有名プレーヤーたちが月に1~2回ライブ実施

「カフェミュージック」というカテゴリーを生んだほど、カフェと音楽の親和性が高かった時代。そして現在、『KAKULULU』の客層は、平日は近隣で働く人たちのランチや打ち合わせ、週末はカップルなどさまざまな年齢層の人たちが来店する。約9割は女性客だが、彼女たちはとくに音楽を意識して来店しているわけではないとか。その一方で、お店の定休日である日曜に、月1~2回のペースでジャズミュージシャンたちによるライブがおこなわれている。

「トランペット奏者の類家心平さんとは僕が10代の頃から知り合いで、お店をオープンした早い段階で演奏してもらったんです。以来、ジャズメンがジャズメンを呼んで、いろいろな方が来てくれるようになりました。石若駿さんもよく演奏してくれています。先日はピアニストの渋谷毅さんもプレイしてくれて。僕が大ファンだったポーランドのジャズピアニストであるスワヴェク・ヤスクウケさんも、2年前にプロモーションで来日したときに演奏してくれました」

カフェミュージックとはなんぞや? が最近のテーマ

ドラムが入るときはB1のギャラリースペースで、ピアノは2Fで、DJは1Fで…と、演奏スタイルによって使われるフロアは変わる。「若いジャズミュージシャンほど、いわゆるジャズクラブ以外での演奏を求めている」と語るが、その理由はよくわからないとか。だが、ここがジャズプレイヤーたちに愛されている場所であることは間違いない。
そしてもちろん、『KAKULULU』では通常営業の時間もBGMにはこだわっている。

「お客さんがひとりならソロピアノや弾き語りをかけたり、3人だったらトリオをかけたりしています。あと、最近のテーマは”カフェミュージックとはなんぞや”ということなんです。そこを意識しながら、現行の音楽からセレクトしています。名盤と呼ばれる昔のレコードも大好きですが、お店も自分もまだ若いほうですし、それらの楽曲が似合うほどの説得力もない。2018年の東京でお店をやる以上、いまの音楽が流れるようにしたいんです」

そこで、『KAKULULU』でよくかかる楽曲を6枚セレクトしてもらった。まずは、どんな状態でもかけられる全天候型と語るのが、伊藤ゴロー&ジャキス・モレレンバウム『RENDEZ-VOUS IN TOKYO』。そして、同店で演奏もおこなったという、マカヤ・マクレイヴンの『In The Moment』。1~2分のサンプラー集のようなビート集のような楽曲群が、00年代のカフェブーム期を思い起こさせるという。

ムーンチャイルド『VOYAGER』は、かつて“クラブがオン、カフェがオフ”といった使われ方をされていた時期を彷彿とさせ、その現在進行形ともいえるオフにかけたいソウルであることがお気に入り。また、お店が雨の日にはドミニク・ミラー『Silent Light』がよくかかる。

アントニオ・カルロス・ジョビン『Stone Flower』は、冷たすぎず熱すぎない温度感が店の雰囲気とマッチする。石若駿『Asa』は、お店でライブをしてくれた思い出深い一曲でもある。そして最後は、ブラジル音楽の現在進行形でありヒップホップの要素を巧みに取り入れたロウレンソ・ヘベッチス『O CORPO DE DENTRO』が選ばれた。

美味しいブラジル料理を気軽に

「先ほどお話したように、通常営業のお客さんは音楽を求めて来店されるわけではありません。そうなると、あくまでも僕の趣味。趣味であるからは、自分が好きなものを聴きたいしかけたい。ライブに関しては、やるからには遊びなので本気。ですから、場所貸しみたいなことはしていません。でも、自分が聴きたい音楽だけをと言い続けていたら、たまにびっくりするような方が演奏しに来てくれて。そういうプレゼントがあるのはありがたいです」

ランチの定番はブラジルの海鮮シチューといわれるムケッカ。夜はブラジルのソーセージであるリングイッサやオムレツがよく出る。お酒はビオワインも人気だが、最近は世界のビールが常時5~6本、瓶で揃う。

「ブラジルはあらゆる人種が混在するミックスカルチャーなので、世界中の人が食べて美味しいと思える料理なんです。でも、日本でブラジル料理というとサンバが鑑賞できるような仰々しいお店が多い。うちはその他のメニューもありますが、気軽に食べられるブラジル料理がウリのひとつです」

 

  • 店舗名 KAKULULU
  • 住所 東京都豊島区東池袋4-29-6 三角ビル1F
  • 営業時間 11:30~17:00(火曜・木曜)、11:30~23:00(木曜・金曜・土曜)
  • 定休日 月曜・日曜・祝日
  • 電話番号 03-6907-0652
  • オフィシャルサイト http://kakululu.com/

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