2019.01.25

【ASYLUM Coffee ROASTERS/アサイラム コーヒー ロースターズ】自家焙煎の珈琲が愉しめるスマート空間

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

いつか常連になりたいお店 #33

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、ブルックリンやソーホーにあるカフェのような店内で、気軽にジャズが愉しめる『ASYLUM Coffee ROASTERS(アサイラム コーヒー ロースターズ)』を訪問。同店のフレンチローストのように、クセになる旨味を感じるお店でした。

趣味の焙煎が高じてカフェをオープン

東京・渋谷と恵比寿の中間地点に位置し、明治通りから一本入った場所にある『ASYLUM Coffee ROASTERS(アサイラム コーヒー ロースターズ)』。ここは、2014年にオープンした自家焙煎によるカフェだ。店内にはモダンジャズが流れ、ゆっくりとスマートな時間を過ごすことができる。店主の鶴見敏彦さんは昔から焙煎を得意としており、その趣味が高じて同店をオープンさせたという。その一方で、イベント広告会社の社長という顔も持つ。

「昔から珈琲好きで、自宅に小さな焙煎機を買ってローストしていたんです。でも、家族で消費するには限界があって、ご近所に配っても余ってしまったり、どうしたものかと悩んでいたんですよ。そのうちに、お店をやりたいという気持ちが高まってきたんです」

『ASYLUM Coffee ROASTERS』に置かれている焙煎機は、軽井沢で開発された完全熱風式のGRN(グローバルロースターネットワーク)製品。これまでは自己流で焙煎の腕を磨いてきたが、導入にあたり半年ほど同社で指導を受けたという。

「オープン以来、ほぼ毎日焙煎しています。常に9種類は豆を用意しています」

メインとなるのは飲みやすいアサイラムブランドと、深煎りのフレンチブレンド。その他に、ブラジル、コロンビア、マンデリン、ガテマラといったシングルオリジンも並ぶ。ネルドリップによる珈琲以外にも、エスプレッソやカプチーノなどマシーンによるメニューも人気だ。

「自分は50代なので、珈琲は深煎りで育っているんです。なので、当初はフレンチブレンドだけでいこうかとも思ったんですよ。でも、若い人たちはスターバックスやタリーズといった珈琲に慣れていることもあって、ビターな味に抵抗がある。アサイラムブレンドは、そういった意味で万人向けに仕上げています」

日本の喫茶店文化を残したい

鶴見さんが珈琲好きになったのは中学生のとき。スペースインベーダーなどのテーブルゲームが人気だったこともあり、ゲーム目的で喫茶店に足を運び珈琲の味を覚えた。その後、高校生になるとゲームではなく、いい音楽がかかるお店や居心地のいいお店を探すようになったという。

「上京した80年代初頭に、”美味しいコーヒーをどうぞ” 的な深煎り珈琲を出すお店が流行り始めてよく通いました。その後、しばらくしてドトールさんのようなチェーン店が増えてきたんですよね」

『ASYLUM Coffee ROASTERS』は、NYのブルックリンやソーホーのカフェスタイルのような内装ながら、カップはロイヤル・コペンハーゲンやウェッジ・ウッドといったヨーロッパの食器を使用している。また、ネルドリップ式で淹れるというあたりも、日本の喫茶店文化を反映させていることが伺える。そして、驚くべきはクリーンな雰囲気の店内にも関わらず、喫煙可にしている点だ。

「珈琲を飲みながら煙草を吸う、そんな昔ながらの喫茶店文化を残したいという気持ちがあるんです。自分もずっと止めていたのですが、最近はたまに吸うようになりました」

日常における避難場所になりたい

店内のオーディオは、スピーカーがウーレイ、アンプはマランツ、ターンテーブルはエラックという組み合わせ。そんなシステムから流れるのは、40年代後半~60年代のモダンジャズだ。午前中はビル・エヴァンスやキース・ジャレットのような楽器パートの少ない音楽がかかり、午後からは店内の雰囲気を見ながら選曲していくという。また、気軽にジャズを聴きながら珈琲を愉しんでもらいたいという思いから、あまりボリュームは上げずライトな雰囲気を目指している。

「学生の頃は、60年代の英国やアメリカのロックばかり聴いていました。ジャズを聴くようになったのは30代から。60年代がロックの時代だとすると、50年代はジャズが熱かった。その時代のエネルギーや、一発録り的な音楽への取り組みが新鮮でかっこよく感じたんです。ミュージシャンもドラマチックな人生を歩んでいて、まとっている空気もかっこいい。最初はメロディラインがきれいなピアノから入って、その後にサックス。好きになればなるほど難解なものに惹かれるようになりますよね(笑)。でも、そういうのはお店ではかけないです」

車は66年式のフォード・ムスタングと古いローバー・ミニ。バイクはハーレーと多趣味な鶴見さん。レストアなども自ら行っている。最後に、店名にアサイラムと名付けた理由を聞いた。

「好きだったジャクソン・ブラウンが、当時アサイラム・レコードから出していたんですよ。そのときからずっと『アサイラム』という単語が気になっていて。そこには避難場所という意味もあるんです。いまは煙草を吸う人にとっては肩身の狭い時代ですし、仕事中に気分をリセットしたいとき、考え事をしたいときのエスケープゾーンになりたい。喫茶店って、気軽に非日常が楽しめるところが魅力だと思うんです」


・店舗名 ASYLUM Coffee ROASTERS

・住所 東京都渋谷区東2-29-6 セントラル恵比寿ビル1F

・営業時間 10:00~18:00

・定休日 日曜・祝日

・電話番号 03-6418-5313

・オフィシャルサイト http://asylumcoffeeroasters.com/