投稿日 : 2021.04.23

【東京・飯田橋/BAR MEIJIU】技ありカクテルをグッドミュージックと共に

取材・文/富山英三郎  撮影/藤川一輝

BAR MEIJIUの写真8、バー メイジウの写真8
いつか常連になりたいお店 #57

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は飯田橋駅(東京都千代田区)から徒歩3分の場所にある『BAR MEIJIU(バー メイジュ)』を訪問。パンデミックな状況に振り回されつつも、今まさにポジティブな変化が生まれている同店。スマートな空間に良い音楽、そして驚きのあるカクテルをぜひ!

BAR MEIJIUの写真1、バー メイジウの写真1

レコードが回る禁煙バーとして2010年オープン

JR中央・総武線を始め、地下鉄東西線・有楽町線・南北線、都営大江戸線と、5つの路線が利用できる飯田橋駅。好立地ではあるものの、これまでは「乗り換えでよく使う」というイメージが強かった。しかし、近年は駅周辺が再開発され、商業施設や複合施設、タワマンなどが建設され変化が生まれてきている。『BAR MIEIJIU(バー メイジュ)』のあるプラーノモールもまた、大規模な再開発により2009年に生まれた商業施設だ。

「メイジュは中国語で、美しい酒と書きます。アナログレコードをかける、禁煙のバーとして2010年4月にスタートしました」とは、店をひとりで切り盛りしているバーテンダーの松本圭祐さん。

今では禁煙が当たり前の時代だが、オープン当初は理解されないことも多かった。

「ジャズのレコードをかけているくせになぜ禁煙なんだと、よく言われました(笑)」

BAR MEIJIUの写真2、バー メイジウの写真2

インダストリアル×ウッドの不思議でモダンな空間

『BAR MEIJIU』の内装はインダストリアルをベースとしながら、ウッドを多用したモダンでかっこいいデザイン。東京の人気ミュージックバーを数多く手がけるデザイナーに頼んだという。路上からはカウンター5席の小さお店のように見えるが、店内奥には3テーブル(10席)もあることに驚く。また、柱の関係でカウンターが分断され、入り口が二箇所となっているなど冷静に考えると不思議な作りとなっている。

「スケルトンから作ったのですが、こういう使い方をしてくるとはって感じですよね。こだわりの強いデザイナーさんなので、ほぼお任せでした」

店の中央に置かれたスピーカーはカウンターに向けられており、テーブル席からするとスピーカーは真裏。一見不都合に感じられるが、間仕切りも高いので、トークを楽しみたいテーブル席の客にとっては喋りやすく音楽も邪魔にならない。一方、ひとりで音楽とお酒を楽しみたい客にとっては、話し声が気にならず自分の世界に没頭できる。いい分断がなされているのだ。

BAR MEIJIUの写真3、バー メイジウの写真3

現代のジャズやポスト・クラシカルが中心

「大学時代は建築の勉強をしていたんです。でも、好きな音楽を聴きながらひとりで何かをしたいと思って。そう考えたときにバーという選択肢が出てきて修行を始めました」

松本さんが音楽に目覚めたのは高校から。父親がジャズ好きでオーディオルームも持っていたが、当時はあまり関心がなかったという。本人はザ・ストロークスなどのロックを皮切りに、トータスなどポスト・ロックに興味が生まれ、エレクトロニカも含めたインストゥルメンタルを聴くようになっていった。また、並行してJ・ディラなどのヒップホップも愛聴していく。

「その流れの中でモダンジャズも聴くようになったんです。当時ピンときたのは、キース・ジャレットの『Facing You』や、マイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』。その後、相性の良さを感じたのがECMでした。でも、大学に入る頃にはすでにグラスパーが出てきていたのでよく聴いていました。最近は、現在のジャズやポスト・クラシカルをよく聴いています。ディスク・ユニオンがお店の近くにあるのでよく行っていますね」

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最近のお気に入りアルバム(写真左→右):エレクトロニカな空気もあるビートのない静かなサウンド。2021年1月発売。『Philadelphia』SHABASON,KRGOVICH & HARRIS)/ ピアノとトランペットとボーカルだけで構成された1977年のECM作品。『AZIMUTH』JOHN TAYROL,NORMA WINSTONE,KENNY WHEELER/ 1974年発表のピアノ・デュオアルバム。『DRIFTING』WALTER NORRIS,GEORGE MRAZ

コロナにより、バーのスタイルがポジティブに変化

これまでは40代や50代のお客さんが多く、主に会食後の一杯やデートなど、オーセンティックバー感覚で利用する人が多かったという。しかし、コロナ以降は音楽好きも来店するようになり、レコードに耳を傾けてくれる人が増え始めたという。

「以前からTwitterのアカウントはありましたが、あまり熱心にツイートしてこなかったんです。でも、コロナになってまじめに呟き始めたら、音楽関係者の方が来られるようになって。あとはジャズ喫茶案内さんが毎日のようにリツイートしてくれるんです。そこから客層が変わってきました」

ポジティブな変化は音楽だけでなく、お酒へのこだわりやバーのスタイルにも表れ始めた。

「もともとカクテルが好きなのですが、日本のバーカルチャーとグローバルでのトレンドは分断されていて……ミクソロジーは日本も早めにキャッチアップできていたんですけど。僕が提案していきたいのは、もうひとつの潮流でもあるスピークイージーをベースにツイスト(アレンジ)したクラフト・カクテルなんです。でも、コロナ前はそこを求められるような雰囲気ではなかった。でも、お客さんが若返ったので今後は推していきたいです」

BAR MEIJIUの写真5、バー メイジウの写真5

スピークイージーとは、禁酒法が施工された1920年代のアメリカで花開いたアルコールの密売や隠れバーの文化。品質の悪い密造酒が横行していたため、それを誤魔化すために数多くのカクテルが生まれるきっかけともなった。現在、スピークイージーはクラシックなカクテルを意味することも多い。

「日本でクラシックといえばマティーニやギムレット、ホワイト・レディあたり。でも、海外のクラシックはオールドファッションやネグローニだったりするんです。その他にも日本では知られていないものがたくさんあるんです。そういったものを知ってもらうため、新たにメニュー表を作っているところです」

昨年から自家焙煎もスタートし、ネルドリップで淹れるコーヒーも熱心に取り組んでいる。飲食店にとってコロナは打撃だが、新たな取り組みのきっかけにもなっているのだ。

BAR MEIJIUの写真6、バー メイジウの写真6

20代や30代の人が来店しやすい雰囲気を作っていきたい

現在お店の音響は、スピーカーにタンノイのバークレー、プリメインアンプにラックスマン、ターンテーブルはデノンという構成。

「柔らかい音が好きなんです。タンノイは弦楽器の音がきれいですし、寸法的にもちょうど良かった。デザインベースで選びつつ、自分の好きな音に近づけているという感じです」

選盤に関しては、お客さんが少ないときはピアノ・ソロやデュオなどが中心。人数が増えてきたらドラムが入るような音楽に変えていくという。

「バーってどうしても敷居が高い雰囲気があると思うんです。でも、うちは20代や30代の人が来店しやすい雰囲気を作っていきたいと思っています。カクテルは一杯1000円以上してしまいますが、チャージは取っていないので、気軽に利用していただければと思います」

取材・文/富山英三郎
撮影/藤川一輝

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・店名 バー メイジュ
・住所 東京都千代田区富士見2-7-2 プラーノモール C103
・営業時間 15:00~24:00
※コロナ禍は営業時間が変わりやすいため下記SNSでご確認ください。
・定休日 不定休
・Facebook https://www.facebook.com/bar.meijiu/
・Twitter https://twitter.com/barmeijiu
・Instagram https://www.instagram.com/barmeijiu/