投稿日 : 2018.11.13

【arflex】モダン家具ライフの先導者“アルフレックス”に学ぶ「気持ちよく、合理的で、家族の幸福につながるスタイル」

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

1969年以来、日本にモダンファニチャー(現代家具)を持ち込んだだけではなく、日本人がいかに豊かに暮らすかを考え続けてきたアルフレックス ジャパン。そのひとつの完成形が河口湖(山梨県)にある。1987年に誕生したモデルハウス「CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサミア河口湖)」は、完成から約30年後のいまだからこそ現実感を持って参考にできる、暮らしのヒントが詰まっている。

イタリア的な暮らしが体験できる

中央自動車道の河口湖I.C.からクルマで約15分の場所にある「CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサミア河口湖)」。北イタリアを彷彿とさせる自然豊かな約4500坪の敷地には、異なる設計思想のもとに生まれた3棟のモデルハウス、大型のショールーム、研究開発棟が併設されている。

各建物は自然の高低差がそのまま利用されており、すべての施設をぐるりと回遊できる設計。そのため、鳥のさえずりを聞きながら散歩感覚で巡ることができる。見学には同社のスタッフが同行してくれ、それぞれの建築思想や建材、セレクトされた家具の理由などを詳しく教えてくれる。定休日は日曜・祝日、さらに完全予約制のため少々ハードルは高いものの、新居や引っ越しを考えているのなら一度は訪れたい、勉強になるスポットとなっている。なお、室内のインテリアは定期的に変更されている。


モデルハウス A棟

鉄筋コンクリート造(壁構造)/地上2階/建築面積156.61㎡(47坪)/延床面積284.10㎡(85坪)、ガレージ19.61㎡(6坪)

40代夫婦、子どもふたりをイメージしたモデルハウス。1階の各部屋はドアを設けず、角度や段差だけで空間を区切ったオープンな構成。大きな窓やテラス、鏡などにより、視覚的な広がりが生まれるような工夫もなされている。2階部分は、階段を上ってすぐの場所にあるファミリールームを挟みながら、マスターベッドルームとベッドルーム(子ども部屋)ふたつの計3部屋がある。インテリアは白を基調とした明るい色味で構成されており、開放的な暮らしが提案されている。

自然光がたっぷりと入るリビングには、空間や過ごし方に応じてユニットを展開できる、アルフレックスのロングセラーモデル「SONA(ソーナ)」のソファが置かれていた。
ダイニングテーブルは食事をするためだけでなく、作業台や親子での勉強スペースなどで使えるため、少し無理をしても大きめがいい。W2400×D1000×H720mmのダイニングテーブル「CREDO(クレド)」が設置されているが、窮屈さはなく空間使いの巧みさが現れている。また、テラスにつながる窓は壁面にすっぽりと隠れる仕様のため、すべて開けた際には内と外が一体となり開放感がアップする。
階段を上ってすぐの場所にはファミリールーム。第2のリビングとして使え、音楽を聴きながらの読書などにも最適。

モデルハウス B棟

鉄筋コンクリート造(ラーメン構造・柱梁構造)/地下1階・地上2階/建築面積157.13㎡(47坪)/延床面積322.33㎡(97坪)、ガレージ36.54㎡(11坪)

レイアウトの変更に対応しやすい、典型的なヨーロッパ型のスクエアな住宅。こちらは50〜60代のファミリーをイメージ。エントランスの吹き抜けや室内の壁には、ベネチアンスタッコ(イタリアの漆喰)が使用されており、床には大理石や無垢材のフローリングがあしらわれている。各所に自然素材が使われており、経年変化が楽しめる家となっているのもポイント。また、開口は抑えられており、必要な場所に照明を置くことで「灯り」を楽しむヨーロッパのスタイルを提案。そのコンセプトに合わせて、インテリアはシックで落ち着きのあるもので構成されている。

背やアームのないユニットをうまく組み合わせることで、抜け感のある開放的な空間が演出できる「BRERA(ブレラ)」が置かれたリビング。
マスターベッドルームには、ヨーロッパの住宅らしくウォークインクローゼットと専用のバスルームが用意されている。また、ベッドルームには書棚とコンパクトなソファがあり、眠るだけではなく、その前後の時間も充実して過ごすという提案がなされている。

モデルハウス C棟

鉄筋コンクリート造(壁構造)/地下1階・地上2階/建築面積189.60㎡(57坪)/延床面積 Aタイプ212.76㎡(64坪)、ガレージ29.40㎡(9坪)、Bタイプ164.46㎡(49坪)、ガレージ24㎡(7坪)

傾斜地に建てられた集合住宅を想定したモデルハウス。別荘用途を考え自然素材を多く使い、屋外と室内の一体化を考慮したデザインになっている。まだ、段差をうまく使うことで空間の広がりを見せ、コンパクトながらゆとりのある構成になっている。

手前がダイニングキッチンになっており、一段下がった場所にリビングスペース。ホームパーティなどに最適な開放的な空間。
家具とともに照明やアートもアレンジされており、暮らしのなかで気軽にアートを楽しむためのヒントが得られる。
階段を上がった場所にあるファミリールーム。わずかな空間ながら、書斎のようなくつろぎの空間が生まれている。

イタリア生まれ日本育ち? その理由とは

「CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサミア河口湖)」にあるモデルハウスは、1987年と1989年の2回に分けてオープンした。当時はかなりのモダン建築であり、特殊な建材を使っている箇所もあるため、イタリアから職人を招き、地元の工務店に技術を習得してもらいながら手間暇をかけて作られたという。それから約30年、いま見てもオシャレな建築ではあるが、当時の日本人に比べたら断然身近に感じることができるだろう。そんな空間に、いま買える家具が置かれているのだから、参考にできる点は多い。

アルフレックス ジャパンの創業者である保科正(ほしな ただし)氏は、かつて「VAN JAC.(ヴァン・ジャケット)」の宣伝部に勤めていた。出張でたびたび欧米に行くなかで感じたのは、ファッションにはお金をかけるのに、生活様式は旧態依然である日本の暮らしに対する違和感だった。同氏はとくにイタリア人のライフスタイルに大きな影響を受け、住まいを中心とした豊かな暮らしがいずれ日本にも定着すると予想。VANを辞め、何のあてもないままに妻と1歳の息子を残してイタリアへ旅立った。

その後、街で偶然見つけた「アルフレックス」に飛び込み、無給での丁稚奉公を志願。ものづくりが好きで手先が器用だった保科氏、1か月後には社員となり家族を呼び寄せ、製造から製品開発に至るまで家具づくりの基本を約3年間で学んだ。その後、アジアでの販売権と日本オリジナルデザインの製造権を手に帰国し、1969年に「アルフレックス ジャパン」を立ち上げることとなる。

1971年に発売された、日本オリジナル第1号製品「レインボー」。小ぶりでモダンなデザインは当時大ヒットとなった。

道具ではなくライフスタイルを売る

しかし、当時の日本はまだ畳の部屋がほとんどで、家具売り場にはちゃぶ台や箪笥が並び、婚礼セットが売られている時代。そこからの苦労は並大抵のものではなかった。目指したのは「道具を売るのではなく、ライフスタイルを売る」ということ。今回紹介した「CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサ ミア河口湖)」もその一環なのである。

また、「アルフレックス ジャパン」はその歴史のなかで、日本人の住まいにフィットするオリジナル企画の製品を増やし、現在は全体の9割以上にまで比率を高めている。さらに、旭川に専用工場を作り、品質面や販売実績において本国を凌ぐほどに成長。創業者がイタリアで学んだ「気持ちよく、合理的で、家族の幸福につながるスタイル」はそのままに、日本で育まれたモダンファニチャー・ブランドとして認知されている。

そんな歴史を知ったうえで「CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサ ミア河口湖)」を訪れ、スタッフの解説を聴きながら、見て触ってくつろいでみると「自分や家族にとって、快適だと感じる住まい方は何だろう?」という大事な疑問が湧き上がってくる。


CASA MIA KAWAGUCHI-KO(カーサミア河口湖)

住所 山梨県南都留郡鳴沢村7251

営業時間 9:00~18:00

定休日 日曜・祝日(期間限定・予約制)

電話 0555-85-3411

オフィシャルサイト http://www.arflex.co.jp/

※見学希望者は電話のうえ要予約