須永辰緒(DJ/プロデューサー)|RECORD! RECORD! RECORD! – レコードで聴きたい3枚 –

2016.04.14

須永辰緒(DJ/プロデューサー)
“レコード番長”の異名をもつ日本を代表するDJのひとり。多種コンピレーションの監修やプロデュースワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ200作超え。2015年にDJ活動30周年をむかえている。

フォークロアや伝統的なクラシックを背景に、第一次世界大戦後にアメリカのジャズの洗礼を受け、さらには欧州に移り住むジャズマンが、その独自性にペーソスやテクニックを伝え、現代の欧州ジャズの基盤が固まった時期があるわけです。そういった過渡期のジャズは本当に愛おしい。たとえば同時期のBlue Note作品と比べてどうか? という議論はさておき、私はそこに至る“歴史”に魅入られてしまった偏狭派なのです。

 

  • Christian Schwindt Quintet
    For Friends and Relatives

    入手まで8年を費やしたことはともかく、ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットの台頭で世界に名を轟かせたフィニッシュ・ジャズ。シベリウス音楽院という北欧きっての名門音楽大学を擁するフィンランドはフォークロアなクラシックをベースに、ほかの諸国同様、第一次世界大戦を経てアメリカから来欧したジャズを独自に発展させた経緯があり、本場のそれとは若干の脆弱さを孕んでいます。本盤は録音されたのは1965年。本場ではモダンジャズからフリージャズやエレクトリックの導入の萌芽という流行の先端の時代からするとセンスの遅れは否めないところではあります。が、この荒涼に佇みトーンを落としたジャケットは北欧ジャズのそんな歴史を想起させてくれます。収録曲の「Helsinki at Noon」が好きで、ヘルシンキでヘルシンキ・アット・ヌーンをプレイするという夢は一昨年ジャズフェスに招聘していただいた際に果たしました。昨年200g重量盤が再発されましたのでぜひ探してみて下さい。

     

  • Staffan Abeleen Quintet
    Downstream

    スウェーデン産屈指の名盤。こちらは拙『須永辰緒の夜ジャズ・アナログ復刻5+1』で日本盤化したもの。60年代モードジャズの金字塔的作品。当時の帯原稿です。スタファン・アベリーン(p)の叙情的でかつ北欧イズムに彩られた豊穣な響きのプレイ、現在のクラブ・ミュージックとシンクロするかのような美しいテーマ・ループとリリカルなインタープレイ。「Fin Skint Över Havet」にはそのすべてが表層し、繊細でいて相反する力強さを持つ旋律美は、不思議と懐かしい情感を呼び起こす。10分ほどの曲ですがその展開の妙で飽きることなく延々と聴き入ってしまう、そんな魅力的な曲です。同シリーズでは『Persepolis』も復刻。こちらも壮大なスケールのモードジャズ。合わせて入手してほしいと思います。

     

  • E.S.T.
    Retrospective The Very Best of e.s.t

    現代スウェーデンを代表したエスビョルン・スベンソン(p)率いるピアノトリオのベスト盤。私は1993年のデビューに偶然CDショップで購入、以降事故でエスビョルンが逝去する2008年という短い活動期間のCDはすべてリアルタイムで購入というリアル・ファンです。その期間にリリースした13枚のアルバムからの編集盤がこちら。つい最近何枚かがアナログ化されましたが、CDしか出ていないことを歯痒く思い、また個人的にインプットがアナログを使用するスタイルだったので初期傑作「Dodge the Dodo」「Spam-Boo-Limbo」はダブプレートを作り、それでプレイしていました。初来日時にダンスミュージック系の『remix』という音楽誌でインタビューをさせてもらう機会に恵まれ(当時はエスビョルン・スベンソン・トリオ)私がそのダブプレートを持参した際には大いに喜ばれ3人のサインも頂きました。当時はジャズ誌のフォローが少なく、ダンスミュージック系からのエールが熱かったのは近年のロバート・グラスパー近辺やUK勢(マシュー・ハルソールやフローティング・ポインツ)あたりにも顕著。E.S.T.の系譜はダブ・ステップやポストエレクトロニカとも融合しつつ、マンチェスター出身のゴーゴー・ペンギンに受け継がれています。

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