2019.05.22

【review】エズラ・コレクティヴ:南ロンドンの真打ちが放つ“遅すぎたデビュー作”

タイトル
ユー・キャント・スティール・マイ・ジョイ
アーティスト
エズラ・コレクティヴ
レーベル
インパートメント
価格
¥2,300 + tax
発売日
2019.05.16

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「南ロンドンを知りたければ、まずはこれを聴いてみて!」とオススメしたくなる一枚。数々の才能を輩出するUK“新世代ジャズ”シーンにおいて、ひときわ高い人気を誇るバンド=エズラ・コレクティヴ。そのデビュー・アルバムが本作『ユー・キャント・スティール・マイ・ジョイ』だ。

しかし、これがデビュー・アルバムというのは少々意外だった。というのも彼らは今年で結成7年目。デビュー作をリリースするには遅すぎるくらいだし、2017年に日本限定で発表された合作EPChapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher』(注1)は、オリジナル・フルアルバムと見紛うほどの快作だったからだ。

注1:自主リリースのEP『Chapter 7』(2016)と『Juan Pablo: The Philosopher』(2017)の2作をカップリングした日本企画盤

スタイルを確立するまでに時間がかかったのか、はたまたキャリアのピークに達するまで温存していたのか、いずれにせよ、今回のアルバムには良い意味でデビュー作らしからぬ貫禄が漂っている。

エズラ・コレクティヴのメンバー。向かって左から、ディラン・ジョーンズ(tp)、TJ・コレオソ(b)、ジェームス・モリソン(sax)、ジョー・アーモン・ジョーンズ(key)フェミ・コレオソ(ds)

メンバーは全員、英国のジャズ教育プログラム「トゥモローズ・ウォーリアーズ」の出身。そこで出会った彼らは在学中にエズラ・コレクティヴを結成した。当初は、ジョン・コルトレーンやフェラ・クティ、ボブ・マーリーといった先人たちを模倣したゴチャ混ぜバンドだったようだが、この雑食性が「今日の俺たちを作った」とフェミ・コレオソ(ds)は語っている。

結成から間もなく、2期連続で「英議会ジャズ賞:Best Jazz Ensemble」に輝いた彼らは、その後も数々の英国音楽賞を受賞。その快進撃は海外にも波及している。

昨年のスイス「モントルー・ジャズ・フェスティバル」では、クインシー・ジョーンズの85歳のバースデー・イベントに、ロバート・グラスパーら現ジャズ・シーンの顔役たちとともに出演。フェミ・コレオソいわく、出演の経緯はクインシーから直々にラブコールを受けてのことだったという。

こうした濃密な経験を経て、ついに完成した今回のアルバムは、わずか2日という驚異的なスピードで録音。ジャズ/アフロビート/R&B/ヒップホップなど、あらゆるジャンルを取り込んだお馴染みのスタイルも健在だ。

客演陣も、彼らと同じ南ロンドンで活躍する面々。女性3TOPバンドのココロコ(KOKOROKO)をはじめ、2017年に「イギリスで最もブレイクしたラッパー」として名高いロイル・カーナーや、グラミー賞にもノミネートされた21歳の歌姫ジョルジャ・スミスも参加している。

ちなみに、1曲目の「Space is the place」とラストの「Shakara」は、それぞれサン・ラとフェラ・クティのカバー。これは「作品の最初と最後は自分たちのヒーローのカバーで」という彼らの思いが込められているらしい。

前述のEP『Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher』が、彼らの個性をストレートに表現した作品とするならば、本作は多様性に富んだ作品と言える。これまで培ったあらゆる表現を「試さずにはいられない!」という印象だ。まさに「You Can’t Steal My Joy」(誰も俺の喜びを奪えない)。そんな想いが伝わってくる。

『ユー・キャント・スティール・マイ・ジョイ』詳細
http://www.inpartmaint.com/site/26590/

トラックリスト

1. Space Is The Place (Reprise)
2. Why You Mad?
3. Red Whine
4. Quest For Coin
5. Reason in Disguise ft. Jorja Smith
6. What Am I To Do? ft. Loyle Carner
7. Chris And Jane
8. People Saved
9. Philosopher II
10. São Paulo
11. King Of The Jungle
12. You Can’t Steal My Joy
13. Shakara ft. Kokoroko
14. Mace Windu Riddim (日本盤CD ボーナストラック)