2019.07.31

【review】猛暑の夏、エキゾチックな旅へと誘うVIDEOTAPEMUSICの新作

文/富山英三郎

タイトル
The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC
アーティスト
VIDEOTAPEMUSIC/ビデオテープミュージック
レーベル
カクバリズム
価格
¥2,800+tax
発売日
2019.07.23

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古い映画で観たシーンなのか、自分が海外旅行中に見た景色なのか、幼少期に行った温泉街の記憶なのか、どれも確信が持てないまま時間と空間が歪んでいく。そんな心地良い混沌と、オリエンタルでエキゾチックなトリップが楽しめるVIDEOTAPEMUSIC。

アーテイスト名は、VHSの映像をサンプリングして生み出す音楽制作&映像制作スタイルから名付けられたという。彼は現在、映像作家としても活躍している。

そんなVIDEORAPEMUSICの名を一躍有名にしたのは、カクバリズムから発表したセカンドアルバム『世界各国の夜』(2015)。VHSからのサンプリング音をベースに、ピアニカなどを組み合わせ、チャチャやマンボなどラテンの雰囲気を押し出したエキゾチックな音世界で衝撃を与えた。続くサードアルバム『ON THE AIR』(2017)では、フィールドレコーディングの要素も加わり、不思議な南国感はそのままにアンビエントな風合いを帯びた作品に仕上げた。

そして、このたび4枚目となる『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』が完成した。これまではインスト曲が多かったが、今回は全11曲中9曲にゲストボーカルを招いた歌モノアルバム。ヴォーカルが入ることで、輪郭がはっきりとしてしまうのでは? と危惧していたが、日本語が聞こえてきてもなお、どこにいるのか、いつの出来事かすらわからない無国籍なムードが漂う。ポップ度合いはUPしたが、それぞれの歌はナレーション(心象描写)のようであり、街角のラッパスピーカーから流れているかのようであり、気づけばエキゾチックでモンドなグルーヴのなかに溶けていく。不思議だ。

フィーチャリングされているのは、CKBの横山剣、ceroの高城晶平、シンガーソングライターの折坂悠太、ラッパーのロボ宙といった日本勢のみならず、韓国、台湾、フィリピンのアーティストも起用されている。ゲストミュージシャンには、エマーソン北村、TUCKER、角銅真実といったベテランから若手まで幅広い人選がなされており、完璧なコンビネーションが生まれている。

梅雨明けの瞬間から、猛暑が続いている日本列島。窓に腰掛けながら「暑い暑い」とウチワを扇ぎながら聴いていると、自分が異国人として旅をしているような錯覚を起こすだろう。そして、オリエンタルな南国感とは「湿度」の高さにあると気付かされる。VIDEOTAPEMUSICは曲ごとに「湿度」を自在にコントロールすることで、大まかな現在地を示すことができる特異な才能がある。なお、今回のアルバムは後半になるにつれてクーラーが効いてくるかのようなスマートな構成となっている。まずは一聴して、摩訶不思議な旅をご堪能あれ。