【review】孤高のトランペッターが問う、シーンのネクスト

2019.07.11

タイトル
HUMADOPE 2
アーティスト
中村恵介
レーベル
自主レーベル
価格
2,700円

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歴史本や教科書ではあまり触れられないが、日本ジャズ・シーンの特徴のひとつとしてYAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST——通称「ヤマノ」の存在が挙げられる。株式会社山野楽器の主催(注)による「ビッグ・バンド・フェスティバル」として1970年にスタート。75年からは「ビッグ・バンド・コンテスト」と名称を変え、最盛期には全国から60ものバンドが出演。以来50年にわたって学生ビッグ・バンドの技術向上、ひいてはシーンへの人材輩出に貢献してきた。

様々なドラマを生み、ジャズ・シーンに大きな影響を及ぼしてきた同大会も、2019年で50周年を迎える。

個人技を評価する「ソリスト賞」に輝いたプレイヤーだけでも、伊東タケシ(as)、本田雅人(as)、五十嵐一生(tp)、谷口英治(cl)、挾間美帆(p,cond)、安藤康平(as)など、いまとなっては「日本を代表する」ミュージシャンがずらり顔を並べていることからも、同コンテストが日本のシーンに及ぼす影響力の強さが知れるだろう。

トランペッターの中村恵介も、「ヤマノ」経験者のひとり。99年に早稲田大学が誇る名門“ハイソサエティ・オーケストラ”に参加し、同バンドの優勝に貢献している。あれから20年。若手と呼ばれていた中村も、いまやシーンの屋台骨を支える中堅へとステップアップした。ビッグバンドはもとより、鈴木勲、日野皓正、鈴木良雄など重鎮のジャズ・プレイヤーからも重用され、同世代のトランペッターの中でもソリストとして孤高を持しているような印象だ。

HUMADOPE/中村恵介(2014年作品)

そんな中村が自身のユニット名義による2ndをドロップ。ベーシストの金森を除いて、前作からメンバーを一新し、フロントには、大西順子(p)らベテラン勢からもオファーの絶えない吉本章紘(ts)を起用する一方、魚返、竹村という自身より一世代若いメンバーを迎え、およそ5年ぶり、待望のリリースとなった。

バンド名/コンセプトの「HUMADOPE」は、「HUMAN」+「MAD」+「DOPE」の造語。DOPEはスラングだが、「イケてるヤツら」という解釈で間違いない。音を聴けばフレディ・ハバードやニコラス・ペイトン、ロイ・ハーグローヴといった先輩トランペッターに敬意を払いながら、全編でしっかり“不良“な音を奏でていることがわかる。それでも冒頭にエレクトリック・マイルスの影響をしっかり置いたのは、やはり中村なりの矜持だろう。

80年代型の音楽産業のシステム不全をして「ジャズは死んだ」的な議論がなされることが間々あるけれど、そのほとんどが的外れなもの。どうやったってあの頃のように「ジャズ」がオーバーグラウンドになるはずもない。時代も、環境も変わったのだ。しかし、なにもネガティブな方向にだけではない。日本の「ジャズ」は脈々とアップデートされ、周辺のジャンルと混ざり合いながら次代のサウンドを生みだしている。良い時代に生きているなあ。我々はマイルスの音を聴けるけれど、マイルスは中村の音を聴けないんだから。

注:第1〜6回の主催名義は「山野ビッグ・バンド・サークル」

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