2019.08.20

村田中 ─タイプは違うけど似た者同士?のデュオ・ユニット【Women In JAZZ/#12】

インタビュー/島田奈央子 構成/熊谷美広 撮影/平野 明


トランペッターの村田千紘と、ピアニストの田中菜緒子。ふたり合わせて “村田中(むらたなか)”。このユニット名で活動を始めたのは約6年前だった。そして今年8月にメジャー・デビュー・アルバム『SCHOOL OF JAZZ』を発表。デュオ・ユニットならではの強み、そして悩みは? 聞き手はライター島田奈央子。

ふざけて付けた名前が定着

──ふたりが知り合ったきっかけは?

田中 7年ぐらい前に、あるセッションで知り合いました。話してみたら、好きな音楽のジャンルが似てるし、気も合うし。

村田 食べ物の好みも似ていて、自然に同じものを頼んでいたり。

田中 それで “ふたりでライブをやってみようか” と。

──それにしても “村田中”って、女性2人のユニットとは思えないネーミングですよね。

田中 MCで、ふざけて「村田中」って言っていたのがだんだん浸透していって。お客さんからも「次の村田中のライブはいつですか?」とか聞かれるようになってしまい…。

田中菜緒子(ピアノ)

──こうしたアルバムを作る上で、役割分担はあるんですか?

田中 レコーディング前に、ふたりで合宿をすることにしていて、そこでいろいろ曲を作ったり、アレンジを一緒にしたりしてます。

──合宿はどんなところで?

田中 相模湖(神奈川県相模原市)の近くに、音楽合宿ができるような施設があって。周りに何もないし静かなので集中できます。

──今作が2作目のアルバムになりますけど、前作と比較して大きく変わった点は?

田中 3曲でバンドが入っているというのは、新しいですね。前回は完全なデュオだったので。

アルバムのテーマは「学校」?

──バンドのメンバーはどうやって選んだのですか?

村田 もともと“村田中クインテット”という名前でライブをやっていて、そのままレコーディングしたいと思って、3曲をそのバンドで録音しました。

──ベースの高橋陸さんが素晴らしいですね。2人に張り付くように寄り添っているというか。

田中 まだ23歳なんですけど、天才的だと思います。

村田 彼はムードメーカーでもあって、面白いですよ。彼がいると場が和みます。

村田千紘(トランペット)

──とはいえ、緊張感もある。

村田 そうなんです。今回はハイレゾDSD録音なので、完全一発録り。差し替えもできないんです。そういう意味で、今回はメンタル面のコントロールがいちばん難しかったかも。

──アルバムのタイトル『SCHOOL OF JAZZ』には、どういう意図が?

田中 school には「流派」という意味もあって、そういうニュアンスも含んでいます。普通に訳すと「ジャズの学校」ですけどね。

──だからジャケット写真の衣装も、赤いジャージなんですか?

村田 このジャージは田中さんが見つけてきました。

田中 村田中が「村田中(学校)」に見えるという意見があったので、そのイメージで。

──今回のアルバムで気になったのが『村田中ブルース』っていう曲なんですけど。

田中 私の曲なんですけど、ジャズを聴いたことがない人にも聴いていただけるようなキャッチーな曲を作ろうと思って。2人の名前を入れて、より親しみやすく。

──ライブでも盛り上がりそうですね。

村田 すでにライブでもやっているんですけど、たぶんいちばん盛り上がる曲だと思います。

──まるで、村田中のテーマソング。

田中 あと「Slow Life」という曲は、ふたりで書いたんですけど、前作にも入れて、今回はバンドで演奏していて、こちらも代表曲って言えると思います。

音楽には真面目。でも本性は…

──私の勝手なイメージですが、2人とも、学校でいうと優等生みたいな感じかなって思っていました。

田中 ぜんぜん優等生じゃなかったです。

村田 田中さんは突然、踊り出すような人だし。私も学生の頃なんて1週間に1回ぐらいしか家に帰らなくて、毎日朝まで飲んでました。朝起きたら駅のロータリーで寝ていたり。

田中 村田さんはまだ未知の部分も多いです。2人でニューヨークに行ったときも、珍道中でしたね。

村田 ちょっと危ないエリアに入っちゃって。とにかく、こっちが“おかしな人”だと思われれば絶対に襲われないだろう、と思って。ふたりで変な動きで歩いたり。おかげで安全でしたね。

田中 けど、音楽に対しては真面目な2人だと思います。

村田 ライブ中はけっこう集中するので、あまりニコニコとかもできないですしね。

──たとえば村田さんは、自分がリーダーのときとサイドメンときとで、衣装を替えたりしますか?

村田 替えますね。トランペットという楽器の性格上、ライブではステージの前に立つことが多い。それだけで目立っちゃうんです。だから、サイドのときにはリーダーがいちばんカッコよく見えるように、私はモノトーンにすることが多いです。色を使って、それがぶつかっちゃうのも良くないかな…って思って。

──田中さんは?

田中 私も(メイン/サイドで)衣装は変えますね。ただ、肌を露出するのはあまり好きではないし、白のフリフリとかもぜんぜん似合わないので、ビアノの弾きやすさを優先して、パンツスタイルのことが多いかな。

村田 いやいや、田中さんは何でも似合うと思いますよ。ちなみに私は、演奏上の理由で、服のデザインが制限されることも多いんです。たとえば、ワイヤレス・マイクを使う場合は、発信器を付けなきゃいけない。ドレスだとそれを入れる場所がないので、パンツか、ポケットのあるジャケットじゃないとダメなんです。あと、吹いているときに肩が上がるので、それを圧迫しないトップスにする。ピッチリした服だと肩が上がらなくなっちゃうんです。

──トランペットの場合、メイクも難しくないですか?

村田 そうなんです。口紅が塗れないんです。私は血色が悪いので、口紅を塗らないと病気みたいに見えちゃって。ほんとうは塗りたいんですけど、塗れないので、本番のちょっと前に軽く塗って伸ばすぐらいにしてます。

──唇のケアも、気を遣いますよね。

村田 私は海に行くのが好きなんですけど、潮で唇がバリバリになっちゃうので、ワセリンをベッタベタに塗って泳いでます。

──水泳と同じく、トランペットにも “息継ぎ”がありますよね。そこは(田中さんは)ピアニストとして意識する?

田中 バッキングするとき、休むところが欲しいかな…って感じたら、そこで音を埋めたりはしますね。

村田 すごく埋めてくださいます!

ライブ会場をデート・スポットに

──やはり、そういうコンビネーションは重要なんですね。

村田 金管楽器は唇の振動で音を出しているので、ずっと吹き続けることはできない。もちろん、その“間”を上手く使うのも音楽の大事なところで、彼女はその“間”をきちんと聴いてくれて。上手に盛り上げたり、カッコいいフレーズで次に繋げたり、ほんとうにすごいって思います。

田中 相手の気持ちを汲み取ることが大切だと思っています。技術で反応するのではなく、気持ちで反応するというか。

──楽器の直接的な練習以外で、なにか自分に課していることはありますか?

村田 筋トレとか、走ったりしています。あとはヨガで呼吸を整えたり。それをやっていないと、2ステージを吹き切るのが辛くなってくるんです。

田中 私はピアノの練習はしますけど、運動しないですね…。寝てストレスを解消するくらいかな。無理に力を入れるとヒステリックな音になると思うので、ストレスを溜めず、力を抜いて、音の芯を捉えるようなイメージで弾いています。

──今後、村田中はどんな方向に進むのでしょうか?

村田 できる限り長く続けていきたいですね。お婆さんデュオになるまで。それが目標です。若い方や女性に聴いてもらいたいですね。デートでライブに来てほしい。

田中 こんなにムーディーな音楽はないので。

村田 先日、台湾で演奏したんですけど、お客さんがほとんど同世代で。客席の前列がカップル・シートになっていて、バラードとかでチューしてたり。ぜひ、日本でもそういう感じなればいいなって。

村田千紘/むらたちひろ(写真左)
1986年 東京生まれ。小学5年の時にブラス・バンドでフレンチホルンを担当し、中学の吹奏楽部でトランペットと出会い、全国大会で優秀賞を受賞。高校生でジャズと出会い、早稲田大学入学後は音楽サークルで、ジャズ、ラテン、ポップスなど幅広いジャンルで活動する。卒業後、都内のライブ・ハウスなどで活動を始める。2015年12月初リーダー・アルバム『PASSION』をリリース。
田中菜緒子/たなかなおこ(写真右)
1985年 福岡県生まれ。幼少よりクラシックピアノを習い、桐朋学園大学ピアノ科に進学。在学中にブルガリア国際コンクールで1位を獲得。その後ジャズの勉強を始め、都内のライブ・ハウスを中心に様々なライブやセッションに参加。2015年に初リーダー・アルバム『memories』をリリース。2017年『I Fall In Love Too Easily』(キング)でメジャー・デビュー。2018年12月には九州交響楽団と「ラプソディー・イン・ブルー」を共演。
島田奈央子/しまだ なおこ (インタビュアー/写真中央)
音楽ライター/プロデューサー。音楽情報誌や日本経済新聞電子版など、ジャズを中心にコラムやインタビュー記事、レビューなどを執筆するほか、CDの解説を数多く手掛ける。自らプロデュースするジャズ・イベント「Something Jazzy」を開催しながら、新しいジャズの聴き方や楽しみ方を提案。2010年の 著書「Something Jazzy女子のための新しいジャズ・ガイド」により、“女子ジャズ”ブームの火付け役となる。その他、イベントの企画やCDの選曲・監修、プロデュース、TV、ラジオ出演など活動は多岐に渡る。

【村田中 オフィシャル・ホームページ

村田中『SCHOOL OF JAZZ』(キングレコード)

村田中『Selfie』(インパートメント)

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