投稿日 : 2019.03.28 更新日 : 2021.09.03

【証言で綴る日本のジャズ】村上 寛|ロックバンドでコンテストに出場。審査員に渡辺貞夫が…

取材・文/小川 隆夫

村上 寛 インタビュー

ネイティヴ・サンに参加

——そうこうしているうちに本田さんがネイティヴ・サン(注13)を結成する。

そのときは本田さんのトリオでやっていて、峰さんのバンドにも入っていた。

(注13)本田竹曠(key)と峰厚介(sax)を中心に78年3月に結成されたフュージョン・バンド。結成時のメンバーは、大出元信(g)、川端民生(b)、村上寛(ds)。村上は81年まで在籍し、その間に5枚のアルバムを吹き込む。

——峰さんが仰っていたけれど、どっちのバンドもソウルっぽいというか、そういう音楽をやるようになって。「それだったら一緒にやったら」ということでネイティヴ・サンができた。  

バタ(川端民生)(b)は本田トリオで一緒だったし、峰さんのところにも入っていた。だから、タイコとベースが一緒で、あとは峰さんと本田さんが「どうのこうの」って、話し合ったんじゃないかな? それでやることになった。

——ギターの大出元信さんは最初からいたんですか?

やるとなってから本田さんが引っ張ってきました。

——ネイティヴ・サン以前も本田さんのトリオはエレクトリックをやっていた?

やっていません。ぼくが入ったときは、バタがアコースティック・ベースを弾いていたし、もろアコースティックの感じ。峰さんのバンドはオルガンを入れたり、ベースがエレクトリックだったし、ギターも入れてたから、エレクトリックでした。

——村上さん的には8ビートやロックみたいな演奏は違和感なくやれた。

問題なく。あのころ、アメリカじゃそういうサウンドが一般的になっていたじゃないですか。むしろ普通のジャズのほうがない感じで。スタッフ(注14)とかマイルスとか、それが聴いていて自然だったでしょ。アメリカから帰ってきて、日本でも周りがそういう音楽をやっていたから。

(注14)ニューヨークを中心に活動していたスタジオ・ミュージシャンで結成され、70年代後半から80年代前半にかけて活動したアメリカのフュージョン・バンド。リーダーのゴードン・エドワーズ(b)、コーネル・デュプリー(g)、エリック・ゲイル(g)、リチャード・ティー(key)、スティーヴ・ガッド(ds)、クリストファー・パーカー(ds)がオリジナル・メンバー。

——アメリカにいたときはスティーヴ・ガッド(ds)あたりも……。  

聴いてました。最初のころ、スタッフは「ミケールズ」とかに出てたでしょ。あそこで聴いたときに、「すごいな」「やっぱりスタジオでやっているミュージシャンだな」と思いました。ああいうところって、ジュークボックスはけっこうでかい音で音楽をかけてるじゃないですか。まだジュークボックスの音だと思っていたら、ひとがパッと集まりだして、ステージが始まっていたんです。ライヴだけど、バランスがピッタリなのね。「向こうのスタジオのファースト・コールのひとたちはこんなにやれるのか」と思いました。レコードと遜色がないんだから。

——バランスがレコードのクオリティなんですね。

バッチリで、あれには驚きました。普通、違うし、わかるじゃないですか。ぜんぜんわからなかったんですから。

——村上さんはスタジオの仕事はやってない? もう、そういう時代じゃなかったかしら?  

いや、まだスタジオの仕事もあったでしょ。ぼくにそんな話が来なかっただけで。

自身の活動もスタート

——村上さんがリーダー作を作るのは。  

78年かな?

——その年に吹き込んだ『Dancing Sphinx』が最初(注15)。これには、益田幹夫さん、峰さん、川端民生さんなど、村上さんの仲間が集まって。  

杉本喜代志(g)さんとか。あれが終わって、ネイティヴ・サンの活動が本格的に始まるんです。

(注15)フュージョン全盛期に村上が吹き込んだ初リーダー作。メンバー=村上寛(ds) 峰厚介(sax) 本田竹曠(key) 益田幹夫(key) 笹路正徳(key) 杉本喜代志(g) 岡田勉(b) 川端民生(b) 78年4月 東京で録音

『Dancing Sphinx』(1978)

——あれは、レコーディングのために集めたグループ。

そうですね。でも、よく一緒にやっていたメンバーだから。

——あのジャケットはインパクトがありました。

あれは、なにかで見たのかな? 「これ、面白い」というんで、描いたひとを探して。それで女のひと(奥山民枝)(注16)だけど、そのひとのところに行って、「使わせてくれませんか?」と頼んで。

(注16)奥山民枝(画家 1946年~)69年東京藝術大学美術学部卒業、スペイン王立サン・フェルナンド美術大学名誉留学生。86年画集『奥山民枝・旅化生』出版。92年「第35回安井賞」受賞。98年画集『手のなかのいのち』出版。2005年尾道大学教授就任(12年退任)。2010年「第31回広島文化賞」受賞。

——すでにあった絵なんですね。

そう。あのシリーズではもっとすごい絵もあったの(笑)。それはさすがに使えなかったけれど。

——このアルバム、最近はクラブDJの間で再評価されているんですけど。  

えっ、ほんと?

——そういう話は知りませんか?

ぜんぜん知らない(笑)。

——「ジャパニーズ・レア・グルーヴ」といって。

ほんとかな? そうなんですか。

——そのころから、自分のバンドでもやってみようと思っていた?

というか、それでネイティヴ・サンが始まったから。

——村上さんは途中で抜けて。

4年ぐらいじゃないですか? 78年から81年ぐらいまで。

——それからはフリーで。

そうですね。レギュラーという感じのはなかった。あと、峰さんがまた自分のバンドを始めたときは「一緒にやってくれる?」といわれて、しばらくやりましたけど。

——村上さんは曲も書くじゃないですか。

あの1枚目はだいたい書いたのかな? 「書いた」といったって、メロディを持っていって、サウンドを作ってもらうのはひとに任せて。2006年に出した『VIVO!』(ローヴィング・スピリッツ)(注17)も、ちょこちょこ書いていたものを、佐藤允彦(p)さんが曲に仕上げてくれて。

(注17)村上の単独名義では2作目。メンバー=村上寛(ds) 峰厚介(ts) 佐藤充彦(p) 加藤真一(b) 2006年 東京で録音

『VIVO!』(2006)

——全曲、村上さんのオリジナルですね。

「なんでもいいから、書いてあるのがあったら、それ寄越せ」といわれて(笑)。何小節とか、ちょこちょこ書いてあったのを持っていくと、曲にしてくれる(笑)。それを見て、「なんであれがこうなるの?」「やっぱりすごいな」とびっくりしました。

——前から曲は書いていたんですか?

一応ね。1曲分になるものもあれば、その気になっているけど4小節で終わって、ずっとそのままにしていたものもあります。あと、パターンだけ書いて、それっきりとか。

——基本はメロディが優先? それとも、リズムから考えていくタイプ?

メロディですね。あと、リズムとメロディが関係なくというのもあるから、「リズムはこういうのをやりたいけど、じゃあメロディはこの感じで」みたいな曲もあります。

——じゃあ、頭の中で思い浮かんだリズムにメロディをつけることもある。

そうそう。

——ほかに楽器はやらない?

ぜんぜんできないですよ。ピアノで音を探すぐらい(笑)。歩いていて、メロディが思い浮かぶことってあるでしょ。そのままうちに帰って、音を探しているうちにわかんなくなっちゃう(笑)。マイクで録音しても、帰ってそれを聴くと「なにやってんだろう?」(笑)。最初のレコードのときは、ひとりでどこかに籠って、書きました。あのときは6曲ぐらい作ったんじゃないかな?

——ここしばらくは佐藤允彦さんとよくやられているけれど、佐藤さんとの出会いは?  

あれは、トコちゃん(日野元彦)(ds)が「ジャズ・エイド」(注18)で、舞台のソデから落ちて頭を打って、怪我したことがあったでしょ。トコちゃんはそのあと、佐藤さんや中川昌三(まさみ)(fl)さんとやることになっていて、その仕事をトラ(エキストラ)で呼ばれて。ゲイリーさんのときもそうだし、サダオさんのバンドに入ったのもそうだし、だからぼくはだいたいトラ専門なんだよね(笑)。

(注18)「オールジャパン・ジャズ・エイド」のことで、87年から92年にかけて毎年「日本武道館」で開催された。

——それが最初。

あんなに難しい譜面、見たことなかった(笑)。

——プーさんとやっていたから大丈夫だったんじゃないですか?

また、ぜんぜん違う。佐藤さんて、カッチリ決まっているから。完璧に譜面が読めるスタジオ・ミュージシャンが、佐藤さんにはいちばん合っているんじゃないかな? 譜面をパッと出したら、サッとできちゃうような。ぼくは「なに、これ?」みたいになっちゃうから。

——でも、気に入ってもらえて。

なんかねえ、ありがたいですね。「もう、しょうがない」と思っているんじゃないかな?

——そんなことはないと思いますけど。それ以前から、面識はあったでしょ?

ありました。でも、ぜんぜん相手にしてもらえないですよ。

——そんなことないと思いますけど。ということで、今日は面白いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

なんか、取り留めのない話で。

取材・文/小川隆夫

2019-03-10 Interview with 村上寛 @ 麻布十番「カフェ ラ・ボエム」

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