2019.06.28

【飲み屋えるえふる】試聴しながら安く飲める、夢のような空間

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

いつか常連になりたいお店 #38

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、立ち飲み屋とレコード屋が合体した『飲み屋えるえふる』(東京都世田谷区)を訪問。エモ、ハードコア、マスロック、インディーロック、エロクトロニカを中心とした品揃えとはいえ、あらゆる音がクロスオーバー化している時代、ARBAN読者にも新しい発見があるはず? すべてのミュージック・ラバーが楽しめるお店です。

トントン拍子に2015年オープン

京王井の頭線の新代田駅から、環七沿いを歩くこと約2分。通りに面したガラス扉から見えるのは、ちょっぴりおしゃれな立ち飲み屋。さらに目をこらすとレコード屋のような空間が見える。そう、ここは立ち飲み屋とレコードショップが合体した夢のようなお店なのだ。

「もともと僕がレコード屋をやりたくて、さらに飲み屋も好きだったので、一緒にやれたら面白いなと思ったんです。そんなとき、飲み屋に詳しくてアプリも作っている會田さんと飲む機会があったので、軽く相談してみたんです」(辻 友貴さん)

レコード屋のLIKE A FOOL RECORDSおよび、飲み屋えるえふるのオーナー辻 友貴さんと、飲み屋えるえふるのオーナー兼プロデューサーの會田洋平さんは共にバンドマン。音楽性に近しいものはありつつも、対バンするほどではなかったというが、以前から面識だけはあったという。そんな微妙な関係のふたりが、たまたま一緒に飲む機会に恵まれ、お店の構想を話したところ意気投合したのだ。しかも、新代田といえば国内外問わず良質なバンドが出演する『ライブハウスフィーバー』のお膝元。

「まさに、フィーバーの店長がこの物件を紹介してくれたんです(笑)。雑談していたら、”あそこが空くよ”っていう情報をくれて。僕としては、のんびり探そうくらいの気持ちでしたが、すべてが半年くらいの間にトントン拍子に進んだんです」(辻さん)

酔った勢いでついレコードを購入

ふたりがちゃんと会話するようになってから、わずか3回でこの物件の内覧となったとか。

「家賃がこの金額以内だったらやろうか? みたいな話はしていて。内覧に行ったらまさにその金額だったんです。当時、自分は仕事を辞めたばかりで、これからどうしようかと考えていた時期でもあったので、コレはやるしかないなと。飲み屋は好きでしたけど、お店を出すなんて1ミリも考えたことはなかったですね」(會田さん)

以前は、ギャラリー兼カフェだったというこの物件。ゆえに、壁も白くおしゃれだったので居抜きのまま使えたのもラッキーだった。あとはドラム缶を置き、テーブルなどをDIYするだけで現在のカタチが完成したという。

「当初は立ち飲みスペースとレコード屋の間に壁があったんですけど、開店して1年後くらいに取り払いました。それによってシームレスないい感じの空間になった気がします」(辻さん)

同店の魅力は、なんといってもお酒を飲みながら試聴ができるという点。ミュージック・ラバーであれば、酔った勢いでついつい購入してしまうに違いない。

「品揃えとしては、国内外問わず90年代以降のオルタナ、エモ、ハードコアが多いです。とはいえ、僕はどこかにポップさがないとダメなので、激しいサウンドだとしても聴きやすいものがほとんどです」(辻さん)

「9割5分は、辻くんのチョイス。僕はもともとノイズとかフリージャズとか日本のアンダーグラウンドが好きで、そういう文脈で仕入れて欲しい盤があればお願いしています。かつては、大友良英さんや芳垣安洋さんを聴きに、月イチくらいピットインに行っていましたよ」(會田さん)

1500円で、2杯・2品程度の良心価格

瓶ビール班長の飲み歩き日記」という人気ブログを運営している會田さん。飲み屋えるえふるでのこだわりは、赤星の大瓶(サッポロ)、各種ハイサワー、そして焼酎にキンミヤを使っていることだ。

「はてなブログとかが流行ったときに、バンドのライブ情報を掲載する傍らで、お気に入りの居酒屋情報を日記感覚で書いていたんです。そうしたらやけに反響があって、気づいたら飲み歩きブログになっていたんです(笑)」(會田さん)

赤星の大瓶は520円、ウーロンハイは300円という良心価格。惣菜系のおつまみも150円~あり、どれも自分で冷蔵庫から出してキャッシュオンで精算する。1500円で2杯・2品程度行ける計算だ。

「自分が行きたいお店かどうかは常に考えています。そうすると、この値段が妥当だろうなって」(會田さん)

打ち上げが少ない東京のライブシーン

バンドマンである會田さん(core of bells)と、辻さん(cinema staff)が新代田で飲み屋兼レコード屋をやっているとなれば、もちろんライブハウス流れのお客さんが多く集まる。とはいえ、ハードコアやノイズ系となれば、素行が荒い人も多いのでは? と勘ぐってしまう。

「いやいや、うちの店だけでベロベロになる人はほとんどいないです。たまに、フィーバーで飲むだけ飲んでから来る人はいますけど。立ち飲みだから泥酔しにくいというのもあるのかもしれない。あとは、24時閉店を厳守していて、終電で帰れるお店という認知が広がっているので面倒な人は来ないですね。酔っ払って、CDやレコードがダメになったということもないです」(會田)

どんなジャンルであれ、最近は人に迷惑をかけるほどにお酒を飲む人は少ないようだ。

「僕は岐阜出身なんですけど、地元ではライブ後に必ず打ち上げがあったんです。もう10年くらい前ですが、ツアーで東京に来ると打ち上げがなく、終電でさっと帰る人たちが多くてびっくりした思い出があるんですよね。東京はそういう文化なので、ライブ終わりに立ち飲みでサクッとみたいなのは使い勝手がいいのかもしれない」

ARBAN読者に聴いて欲しい3枚

飲み屋えるえふるのお客さんの中心は20~30代の音楽好き。最近は、近所の40~50代も気軽に飲みに来てくれるようになったとか。最後に、ARBAN読者におすすめのレコードを3枚選んでもらった。

上:Black Midi(ブラックミディ)/「Crow’s Perch」、「Talking Heads」の2曲入りシングル
「ロンドンから突然変異的に出てきた4人組バンドで。アンダーグラウンドな雰囲気がありつつも、キャッチーさがあってポストパンク的なサウンドです。9月に来日が決定していて、世界的に話題になっています」

左:The Messthetics(メスゼティックス)/ 『The Messthetics』
「ストレートエッジな思想でも人気のあったポスト・ハードコアの元Fugaziのベースとドラムがやっている3人編成のインストバンドです。即興っぽいサウンドでギタリストが弾きまくる、Fugaziらしさも残っているアルバムです。メンバーはジャズ好きなので、そのテイストも感じられます」

右:Really From(リアリー フロム)/ 『Verse』
「ボストン出身、男女混合4人組のインディーロックバンドです。管楽器やピアノが入っていてジャジーな雰囲気がありつつ、ポップやエモ、ポストロックな雰囲気もある。かつてはPEOPLE LIKE YOUというバンド名だったのですが改名して、まったく同じアルバムをバンド名だけ変えて発売した一枚です」


・住所 東京都世田谷区代田5-28-3 1F
・営業時間 19:00~24:00、16:00~24:00(土曜・日曜) ※曜日問わず14:00から開店することも
・定休日 無休
・電話番号  03-6883-7180
・オフィシャルサイト http://listenandfood.red/